ノラネコの呑んで観るシネマ

オーメン:ザ・ファーストのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
4.4
悪魔の子ダミアンが生まれるまでの物語って、母親の墓を暴いてみたら人間じゃなくて山犬だったはずで、どうやって話を作ってるのかと思ったが、これが実によく出来たプリクエル。
舞台となるのは左派の抗議活動が続き、価値観のパラダイムシフトが起きている71年のローマ。
混乱の時代性を怪異の背景とする手法は、グァダニーノ版「サスペリア」にも通じる。
しかしアルジェント版とは似ても似付かぬ、強烈な作家映画となっていたあの映画に対して、こちらはリチャード・ドナーの旧作にリスペクトを捧げた正統派オカルトホラーだ。
孤児の女の子たちを養育しているローマの修道院にやってきたアメリカ人の主人公が、そこに隠された恐るべき秘密に気づいてしまう。
ここで語られる物語はなるほど、カソリックの権威が失墜した現在ならではのものだが、教会のミソジニーとも絡み、違和感なくうまく機能している。
悪魔の子の“母”を巡る陰謀の謎解きは、ミステリアスに進行し飽きさせず、旧作を彷彿とさせる演出はけっこう怖い。
これが長編デビュー作となるアルカシャ・スティーヴンソンは、いい仕事をしているのではないか。
綺麗に旧作に繋がっているが、続編があるとすれば、何かと評判の悪い「2」以降を無かったことにする形かな。
終盤の展開はその布石かと。
ブログ記事:
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