Yoshishun

オーメン:ザ・ファーストのYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

“音で感じる恐怖映画”

70年代ホラーの傑作『エクソシスト』と双璧を成す『オーメン』。6月6日6時に誕生した悪魔の子ダミアンの周囲に起きる怪奇現象を描いた作品で、今年で公開48年というタイミングで突如前日譚となる本作が公開された。山犬と亡き母との間に生まれた悪魔の子、その誕生の秘密に迫る内容となっている。

その秘密については、悪魔の子の母は誰かをミステリー仕立てで解き明かしていくのだが、正直この部分については散々引っ張った割には普通に察しが付いてしまう。悪魔の子と噂された少女が不在の時にでも災いが起こっていたり、幻覚を何度も見てしまう設定も明らかに匂わせになっているので、正体が明かされた瞬間も特に驚きは無かった。2時間もかける内容ではないと感じたので、マーガレットが修道士として勤め始めた段階ではやや退屈に感じてしまう部分も多かった。

しかし、内容はどうであれ、本作は映画館という暗闇かつ周囲の環境音が遮断された環境をフル活用し、とにかく音の拘りを感じられる1作であった。序盤の鏡の割れる音から始まり、悪魔の囁き、子どもたちの話し声、四方八方から誰かの語り掛ける声が響き渡り、逃げ場のない緊張感を一気に掻き立ててくれる。単にジャンプスケアを多用した単調な恐怖映画とは異なり、映画館の環境を活用した音の演出には、やはり映画館で観て良かったと素直に思えた次第だ。

また、PG12指定ながらも描写はかなり攻めており、冒頭の神父の削れた頭部、少女への拷問、上半身切断、そしてクライマックスの血濡れた出産シーンと、R指定にならなかったことが不思議に思えてくる。ただし、日本版だけかは不明だが、デカデカとモザイクをかける例のシーンはさすがに興醒め。配信版やセル版では無修正版をリリースしてほしい。せっかくの幻覚なのか現実なのか判別できない程狂気的な場面なのに完全に笑かしに来てるので残念だった。

驚きなのは、監督のアルカシャ・スティーブンソンは本作がデビュー作であり、いきなり古典的ホラーの名作の前日譚を任せられたということだ。製作にデヴィッド・S・ゴイヤーというベテランが混じっている中で、古き良きオカルト映画を蘇らせた手腕には脱帽するしかない。また、主人公マーガレットを演じたネル・タイガー・フリーも初めて見たのだが、徐々に狂気に蝕まれ、特にクライマックスでの出産間近の長回しシーンは圧巻の一言。

鑑賞後は間違いなく1976年版を観たくなること必至であり、昨年も『ヴァチカンのエクソシスト』のようなオカルト映画が話題になったように、今の日本でもそれなりに客足が見込めるコンテンツであることは間違いない。惜しくも競合作品が多過ぎて公開2週目にして1日1回上映が殆どではあるが、まさに映画館向きの音で感じる恐怖映画であるため、打ち切られる前に早めに映画館で鑑賞することをお勧めしたい。
Yoshishun

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