6歳のクレオと乳母(ナニー)のグロリア、血の繋がりを超えた深い愛の絆を少女の目線で瑞々しく描いている感動作。
監督は、長編単独監督デビューの新鋭マリー・アマシュケリ。主人公クレオを演じたルイーズ・モーロワ=パンザニは、公園で遊んでいたところをたまたまスカウトされ、乳母のグロリアを演じたイルサ・モレノ・ゼーゴは、実際にフランスで乳母をしていて、本作のリサーチで出会ってキャストに決めたというから驚く。素人と思えない見事な2人の演技は心に沁みた。
母を亡くし、父と2人暮らしの6歳のクレオにとって、世界中の誰よりも大好きな乳母のグロリアだったが、グロリアが家庭の事情で遠く離れた故郷に帰ることになった。お互いに本当の母娘のように想い合っていた2人。突然の別れに戸惑うクレオをグロリアは自分が子供達と住むアフリカの家へ招待する。
グロリア役のイルサ・モレノ・ゼーゴ自身の出身地であるアフリカの島カーボベルデを作中のグロリアの故郷に設定しての撮影。アフリカの北西沖に浮かぶ火山群島の国家のことをこの作品で初めて知った。ポルトガルの植民地だったこの島の言語はポルトガル語。アフリカだけど、何となくラテンの匂いがする街の雰囲気や人々が温かい。グロリアの娘に子供が生まれ、皆が可愛がる様子に嫉妬するクレオ。自分1人のグロリアであって欲しかったのね。グロリアの息子もフランスに働きに出たままだった母に反抗的。色々な想いが交差しながら、クレオの夏休みは終わろうとしていた。
揺れる幼い心の情景をアニメーションのような映像で綴られているのは、ユニークだった。飛行場までクレオを送って別れを告げて帰る道、大粒の涙を流すグロリアに思わずもらい泣きしてしまう。
クレオの愛らしさに誰もが癒される素敵な物語だった。