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メフィストの誘いのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

メフィストの誘い(1995年製作の映画)
3.5
【オリヴェイラが描くファウスト】
ポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラに嵌まっているブンブン。先日TSUTAYA渋谷でファウストの世界をアレンジした「メフィストの誘い」を見かけたので借りてきました。ファウスト映画は、アレクサンドル・ソクーロフやヤン・シュヴァンクマイエルなども映画化し、どれも面白いイメージがある。果たしてオリヴェイラの描くファウストはいかがなものか...

☆「メフィストの誘い」あらすじ
学者のマイケルは妻ヘレンを連れて、シェイクスピアに関する調査の為アラビダの古い僧院を訪れた。そんな彼らを僧院の管理人は試すのだった...

☆「コロンブス 永遠の海」の原点
本作を観ると、2007年にオリヴェイラが手がけた「コロンブス 永遠の海」の原点であることが分かる。学者が、自分のユニークな学説を妻に語りながら歩むという珍しい映像文法はこの作品にも現れている。主人公の学者はシェークスピアはスペイン系ユダヤ人だという説を打ち立てて、古い僧院を観光映画のように巡っていく。

本作は、「コロンブス 永遠の海」とは違い、重厚なストーリーが備え付けられている。僧院の管理人がマイケルの妻に惚れてしまうのだ。仲がイマイチなこの夫婦の仲を裂こうと、管理人はマイケルに若い女性研究員をあてがわせ、隙を狙って妻を奪おうとする。

ストーリーこそ一見ファウストとはほど遠い感じを受けるが、管理人の優しさと邪悪さを兼ね備えた感じを観ると「あーファウストだなー」と想わせられる。やはり、ファウストという物語に惹き込まれるのはメフィスト(=悪魔)というキャラクターのヤバさにあると思う。一見、とても優しい人に見えて、実は危ない奴。しかも、しっかりと調べないと化けの皮を剥がすことの出来ない厄介さは、人生何年も生きていると一度は遭遇したことのある人物。当の本人は悪気を持っているわけではないので尚更厭らしさがある。

本作は、ソクーロフやシュヴァンクマイエルのものよりもかなりストレートに演出していた。これまた演劇的且つ絵画的なオリヴェイラワールドが嵌まった面白い作品でした。
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