【第74回カンヌ映画祭　ある視点部門スペシャル・メンション】
メキシコのタチアナ・ウエソ監督作品。カンヌ映画祭ある視点部門に出品されスペシャル・メンションを受賞、アカデミー外国語映画賞メキシコ代表に選出されショートリストまで残った。

秀作。麻薬カルテルに支配される村で生きる少女たちを描いた作品。ある年齢に達するとカルテルに娼婦として売られてしまう恐怖の中、母は必死に娘を守ろうとする。

メキシコは本当に闇深い…そういう一面的な見方をしてはいけないのかもしれないが、この年の同じくある視点部門に出品された『母の聖戦』を合わせて観るとそういう考えにどうしてもなってしまう。

女性に見えないように髪を短くカットするなど常に恐怖に支配される女性たち。その想いの切実さに強く共感した。

少女たちの友情、母の想いを静かに、でも雄弁に描いた心理ドラマとして非常によく出来ていた。女性たちに幸あれと強く願わずにはいられない。

• #第74回カンヌ国際映画祭
• #第94回アカデミー賞

麻薬カルテルが支配するメキシコの村に住む少女達のお話

メキシコの村に住む少女達の日常生活をドキュメンタリータッチで淡々と描き出していく。初等教育を受けている彼女達は年相応に学び、遊んで日々を過ごす。しかし彼女達が暮らしている村は麻薬カルテルが支配しており、麻薬カルテルは人身売買の為に村に住む少女達を拐っている。少女達は常に麻薬カルテルに誘拐される危険に晒されながら日々を過ごし、成長していく......

少女の目と客観的なカメラを通して描かれる残酷な世界。例えば序盤で提示される「人が突然と姿を消した廃屋」の不穏な光景が少女の視点を通じて描かれ、その後先生から「クラスメイトである少女が誘拐された」と明かされることにより、この残酷な世界のシステムを無理やりにでも理解させる定時の仕方が上手く、この時点でズシンと心に大きく来る物がある。
本作は思春期を迎え始めた少女の物語のため、思春期映画らしく「将来の夢」「恋愛」「反抗」「身体の成長」が描かれる。学校での授業の様子や親友との交流は日常の光景として緩い空気感が流れているものの、突然聴こえてくる銃声によって日常は掻き消され、彼女達は一刻が生死を分ける世界に生きてるのだという現実が重くのしかかってくる。不安定な状態で成り立っている日常の光景と、そんな世界でも何とか頑張って生き抜こうとする少女達の姿。その中でも学校での授業は希望的なものとして描かれており、唯一「未来」が匂わされて提示されていたのが印象的。しかしそれは希望的観測でしかなく、麻薬カルテルの銃声は絶えず響き続ける。
ただもう衝撃的と言うしかなく、あのラストの展開からのラストショット、そしてタイトルである『盗まれた者たちへの祈り』が深く心に突き刺さる。大傑作！
日本上陸希望

• #MUBI