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アビゲイルのまるもっとのレビュー・感想・評価

アビゲイル(2024年製作の映画)
3.6
誘拐した12歳の少女が「吸血鬼」だったというアイデアと
誘拐グループ一味のキャラが非常に立っていて
序盤~中盤までは目が離せない。

多様なキャラクターの中で
肝心の主人公の来し方が
終盤直前まで具体的に示されないので
なかなか感情移入が出来ず、
グループの中で1番掴み辛い人物だった。

様々な来し方を持つグループらに対し、
少女の「吸血鬼」という設定が
他作品から借りてきた既存設定で話が進むので
「アビゲイル」世界に置ける、新解釈がないのは残念。
(既存概念のずらしがコメディに)

また「家父長制」や「男性性」という価値観を
「洋館内に閉じ込める」という設定で表現したのは面白い所。

しかし中盤、今まで積み上げてきた「物語」に雑味が混じる。
「アビゲイル」が全員の過去を、
「邦画の悪い所」である説明会話でしてしまう点と、

ラスボスキャラが終盤、
「もういいや」という劇中の台詞そのまま、

「物語のラストに向かう理屈、もういいや」
という監督の心の声のようにも取れ、
剛腕なやり方でラストバトルに向かう。
(吸血鬼化する某キャラの心理が曖昧)

-------------ここから大ネタバレ--------------------------

ラストバトルはそれまで敵だった
「アビゲイル」と「主人公」が
「新・吸血鬼(男)」を倒す為にまさかのタッグを組む。

「人間」と「吸血鬼」の擬似親子バディものという新たなアイデアと、
「家父長制ファック!」が如く、
女性二人で男を撃退するシーンは「爽快感」と同時に、
シリアスという旨味が落ちる「喪失感」も伴い、
この辺りは好みの別れるところ。


※余談
連続殺人犯である「筋肉」キャラが
窮地に陥った際に十字を切ったり、
首から下げたロザリオを利用され
「アビゲイル」に滅多刺しにされるシーンは
「極上のブラックジョーク」。
※今までの殺人罪は「神」にどう弁明してたのか/笑

また、今作はジャンプスケアが数回あるが、
物語の設定同様、全て「ズラした」ものばかりで、
ほぼ回避不可能とだけ記しておく。
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