ベタ塗りっぽい色にマンガルックのキャラクターが、しかし3Dで動く。さながらこの作品自体がMVであるかのように。朝屋が織重のMVを最初に作るところはさながらRPGツクールのチュートリアルであり、劇中現実と劇中MV中が融合したかのような錯覚にとらわれる。
MV製作が趣味のさながら日向翔陽ルックの高校生主人公が、路上ライブ中のさながら雪野先生ルックの、(翌日赴任してくる)新人教師の曲に感動してMVを作らせてくれと頼むところから話が始まる。
途方もない努力の先で、もう他人には自分の音楽/絵は届かないと、ものづくりを諦めた織重と外崎。まだはじめたばかりで、爛々と輝く希望を持つ朝屋。
結果、朝屋は決定的に織重の感情を読み違え、「このMVは出さないで」と言われてしまう。そして、外崎から曲の解説をされる。
しかし、軽音部のボーカルから、大要、朝屋のMVは解釈違いなのだが、それはそれでアリで、曲の何か新しい面を見つけて、応援してくれている気がすると言われ、織重の引退曲に再度MVをつけたいとお願いする。
朝屋が、二人の苦しみをわからないけれどわからないなりに必死に受け止めて(外崎の51冊のスケッチブック(は背表紙を見ただけだが)と、織重がこれまで作ってきた100曲(これは聴いた))、作り出したMVで、そこまでたくさんのネット民の心はうごかせなかったが、少なくとも織重の心は動かせた。
織重は教師をやめ、また音楽の道に戻るという。
ずっとやつれ死んでいた織重にようやく笑顔が見え、「次は、ものづくりの世界で会いましょう。」と朝屋と握手する。
ものづくりをはじめたばかりの人にも、ものづくりを諦めた人にも、見て欲しい作品。
しかし、『ブルーピリオド』と『言の葉の庭』がチラつく。笑 あとは『映画大好きポンポさん』に、予告もあった『ルックバック』も。