きし

オアシスのきしのネタバレレビュー・内容・結末

オアシス(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

14歳の、双子の兄弟。
兄は、バイクもキックボードも自転車も乗りこなす。
弟は、そんな兄を熱心に目で追う。彼は少し発育が遅い。
おそらくこれまで兄と弟は常に一緒だった。どんなときも。

できることが増えてきて、それを共有し合える友達ができて、
一緒に楽しんでいる時に、弟がいる。
彼は傾斜のある坂の、しかもへりの部分をキックボードのデッキで滑りこなす、ことなんてできない。公園の端っこでバルーンをねじって遊ぶ。

兄は、そんな弟を遠くから見つめ、守り方を探っているように見えた。
友達から揶揄われないようにするためには?

でも一方で、一人気ままに自由に遊びたい気持ちも芽生えているように見えた。
そんなこと考えてはいけない。だって二人には絆があるんだから。そう思わなくちゃいけないのに。
そんな二つの気持ちの中心で自己矛盾を感じ、苛立っているようにみえてしまった。

ノスタルジアを感じさせる淡い夏の光線に、ホットミルクを飲んでまどろんだようなピアノが心地よい。
心地よいからこそこの映画の残酷な部分に目を背けずに見れてしまう。

自分が感じていることを、自分自身の中でさえうまく表現できない思春期の夏に、お互いに求めていない形で亀裂が生まれようとしているように見えて悲しい映画だった。


弟は少し兄にあたりがきつい、ように見える。
「双子は絆を感じると思うけど、あなたはどう?」という質問に、
兄はあると思うと答えた、弟は何も答えなかった。
きし

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