パングロス

成功したオタクのパングロスのレビュー・感想・評価

成功したオタク(2021年製作の映画)
1.2
◎厨二オタクによる中学生日記なドキュメンタリー

小生、コロナ禍で時間を持て余していたとき、BTSのMVに接して衝撃を受け、以来、K-POP 初心者を自称している。
(ただし、ARMY = BTS のファンダム含めて特定アーティストのファンダムには属していない。)

そういう意味で、第23回釜山独立映画祭で、メイドイン釜山審査員特別賞を受賞した本作には、一定の興味をもって臨んだ。

しかし、結論から言うと、本作は、ドキュメンタリーとか、映画とかを名乗ることさえ烏滸がましい、ほとんど小学生か、せいぜい中学2年生による仲間内の交換日記かLINEグループの応答の羅列に過ぎず、大の大人の鑑賞に耐えるシロモノでは全くなかった。

◯成功したオタク
◯アイドルないしアーティストによる犯罪
◯韓国におけるアイドルのファンダムの実像
◯推し活のはらむ問題点
◯罪を犯したアイドルへのファンの向合い方
◯アイドルファンダムによるSNS利用の問題点
◯アイドルの犯罪に対するフェミニズムの動向
etc.‥

と、本作のタイトルからイメージされる様々なテーマは、充分に普遍的な意義深いものになり得る可能性を秘めている。

本作が扱ったアイドルが犯したのは性犯罪であったため、昨今の日本でも大問題となった諸事件の理解についても、本来なら示唆を与えて然るべきところではある。

ところが、本作は、自分の推すアイドルが罪を犯したことで裏切られたファン(=オ・セヨン監督自身も含まれる)たちによる、際限のない自分語り、ほとんど第三者には意味をなさないオシャベリに終始して、それらを相対化し、問題点を明らかにする視点に全く欠けている。

それなりに、複数の「アイドルに裏切られたファン」たちが登場するが、編集作業ということを知らないのか、各人のダダシャベリを、要点ごとにカットしてまとめるようなことを一切せずに垂れ流す。

おかげで、上記した諸問題に関する示唆どころか、肝心の推しが犯した事件の全貌についても、本作を観たあとでも、さっぱり分からないままなのだ。

オ・セヨン監督、題材が題材だったせいで、本作こそ多少の注目は浴びたのかも知れないが、このまま映像作家として生計が成り立つとは到底思えない。

最低点の 1.0 でも良いところだが、せっかくチケット代と時間を費やしたのだからと、何か補えないかと思ってパンフレットを購入した。

◯本作で、監督本人が推していたチョン・ジュニョンが関わった犯罪が「バーニング・サン事件」(Wikipedia に立項)と呼ばれていること。
◯オ・セヨン監督へのインタビューを、BTSやK-POP に関する著書を多数出している桑畑優香氏が担当していること。
◯河昇彬(ハ・スンビン)韓国外大日本研究所招聘研究員による、
《アイドルの「ファンダム」と成タクとフェミニズム運動》
というエッセイが掲載されていること。
◯《議論を深めていくためのブックガイド》が掲載されていること。
などにより、有益な復習ができそうだ。

ということで、 0.2 点加算して、 1.2 点とする。
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