◎クラユカバ スピンオフのウェルメイド箱庭地図
大事なことを最初に言っときます。
本作、先般亡くなられた寺田農御大の遺作です。
最後にテロップが出ますが、御大のファンの方もいらっしゃると思うので、忘れないうちに。
正直、『クラユカバ』より、こちらの方が、ふつうに面白いです。
逆に、『クラユカバ』で、十二分に世界観が構築されているからこそ、ストーリーテリングに振り切れている、と言うか。
さらにハッキリ言ってしまうと、本作は、塚原重義ワールドに心酔した小説家の成田良悟氏がシナリオ原案を担当。
一応、脚本は塚原監督ってことになってるようですが、ストーリーの構築を外注できたことで、分かりやすく、ふつうに面白い作品にできたのかなぁ、って。
だから、こちらの方がスコアも高くしました。
ふつうに、良いから。
YouTube の「塚原重義 / 弥栄堂」にアップされている20本の動画すべて観たわけじゃありませんが、太宰治の「女学生」とか、原作があるものの方が良くできているような気がします。
だから、塚原監督は、今後もストーリーについては自分でやらずに、良い原作を探すか、外注する方が吉かも知れません。
ただ、『クラユカバ』を先に観て、次に『クラメルカガリ』を観て思ったことは、やはり『クラユカバ』の世界観の作り込みの異常なまでの濃密さ、なんですよね。
だから、2作観終わったあと、勢い『クラユカバ』のスコアもアップしました。
これで、ちょっと思い出したのが、作曲家ブラームスの交響曲。
ベートーヴェンを尊敬するあまり、交響曲の作曲に取りかかっても、なかなか完成させることができない。
しかし、難産の結果、産み落とされたブラームスの交響曲第1番、通称ブラ1は、ベートーヴェンの第5と第9を足してブラームス色に染め上げたような濃密な名曲と相なった。
これで、交響曲コンプレックスから解放されたブラさん、すっかりリラックスして、今度はサラサラとブラ2を仕上げた。
これがまた、ブラームスの「田園交響曲」なんぞと言われて、今も愛聴される名曲となっている次第。
『クラユカバ』の『クラメルカガリ』の関係、ちょっとブラ1とブラ2の関係に似てると思いません?
本作も、エンディングのオーイシマサヨシさんによる主題歌『僕らの箱庭』が滅法良かった。
どうも、昭和レトロを偏愛する若き才能たちが、塚原監督のもとに次々と馳せ参じているようで、今後が楽しみであります。
早く次回作が観たい!
期待してまっせ!