アニメーションの快楽は前作を越えている。しかし一方で、物語は前作以上にハリボテ……というかそもそも明確なドラマがほとんどない。だからよく言えばストレスフリーだし、余計に映像の快楽だけが際立つのだが、それでいいのか? 「続けるために作った続編」に分類されると思う。
キャラクターの躍動感は素晴らしかった。前作とのシチュエーションの反復も相まって、モアナが船の操作やアクションの面で成長していることが強調されており、二重に楽しい。前作よりも展開のぶつ切り感が薄れた……というかぶつ切りにし得る何かすらないので、スルスル観れる。
しかし、今回は続編メソッドである「キャラクターを増やしスケールを拡張する」を本当にただそのままやっているだけなので、作品の核がない感じがすごい。妹は別れを惜しませる役でしかないし、一緒に航海する仲間も存在理由が全くわからない。コウモリ女に関しては急に何? 状態。結果、悪い奴だと思ったら……展開を2回やってしまっているのもどうなのか。しかもそのうち一方はキャラクターの前提がよく分からなすぎるので、それが味方でしたとなっても何のこっちゃとしか思わず。極めつけに大ボスの存在は今作だけだと抽象的すぎて、クライマックスは前作以上にゲームっぽかった。
強いて続編らしいドラマの核を挙げるとすれば、「道を決めた後にまた迷ってもいい」ということなのだが、この話でモアナを初めとするキャラクターたちの迷いのドラマってあっただろうか。仮にあったとしても、それが「海の民を繋ぐ」という大目標と関係がないしで、超ぼんやり設計だ。
歌は曲調のバラエティに富んでいたが、前作ほどのパワーはないし、そもそも語るべきドラマがない状況で歌われてもどう受け止めればいいかよく分からないので勿体ない。結局、一番印象的だったのはラストでリプライズされる前作のあの曲だった。あと日本語歌詞の譜割りは酷すぎだ。
その他、マウイとの再会にあそこまでタメが無いのは驚いたし、終盤の神の力が……のくだりもあれよあれよという間に解決してしまうので何が何だか。お婆ちゃん含め死者を乱発しすぎなので有り難み一切なし。そしてモアナは結局そうなるんかい! もう連れてきた仲間なんて完全に蚊帳の外だ。
結局、Disney+のミニシリーズとして企画された内容を1年かそこらで無理くり映画にしたというのが大きいのだろうが……正直勘弁してほしい。とんでもない大ヒットなのでディズニーは満足だろうが、長期的に見るとどうなのか。
たとえば本作を観て、「あの爺さんがモアナと一緒に航海できるなら俺も連れてってくれよ!」なんて思う人もいるんじゃないか。というかここまで来たら「モアナと一緒に映画に出演できます券」とか作って売ればいいと思う。実際、あのよく分からん船員メンバー3人は実は出演券購入した現実の富豪ディズニーファンで、今回は彼らのために作った作品なんです! とか言われても全然納得してしまう内容だった。こういう肖り商法を続けた先にある未来って、極端に言うとそういうことではないか。ハッキリ言って近年の続編商法は異様だと改めて感じた。
※ネタバレ感想ラジオ
『モアナと伝説の海2』はディズニー続編商法の悪しき産物?「続編のため続編」の価値とは【ネタバレ感想】 https://youtu.be/MN7sOfgMQK8?si=ZbjTOfyQtYW2Plm_