大きく、複雑に、描きづらくなった社会をなるほどこういう角度で切り取ってくるのねと思った。
ラストシーンの菅田将暉の『地獄の入り口か』というセリフにてやはりと思ったけど、日本に蔓延っているクズに銃を持たせるシミュレーションのような作品だと思った。もし戦争が始まれば、こういう奴らが嬉々として公務員と化し、大義名分の下、銃を持ち人を殺すという、地獄の入り口。
黒沢清は社会を描きながら社会派ではないみたいなアンバランスさが特殊な作家ではあるものの、グッと社会派に寄ってきたこの作品を持って、かなり危機的な状況に今の日本があるのかなと思った。
配置もなかなか絶妙で、主人公の視点として圧倒的な存在感の菅田将暉に、欲望とイコールを結ばれる女を全身に担った古川琴音、そして映画的快楽を全てやってくれる奥平大兼(めっちゃかっこいい)。有象無象のクズも、なかなかそれぞれのクズで、岡山天音や荒川良々はなんで今まで黒沢の作品に出てなかったんだっけなというくらいフィット感のあるもの。
こういう無気力なクズに光としてもたらされる暴力装置=銃と大義名分、そのビシビシ感じる恐怖だけですごく意味のある作品なんじゃないかと思う。やっぱり銃とか存在しちゃダメだよ。この世に。