黒沢清セルフパロディ的な面白さがあった。まだまだ黒沢清ビギナーではあるものの。無痛で四角い矩形に囲まれた世界からだんだん物理的な獰猛さを伴う道具立てが揃うあたりから特に。更衣ロッカーなんかもう…。湖のほとりの空き家に引っ越すというところはあまりにフラグで笑った。言ってみたら全体がちょっと予定調和で、全くわけのわからない不穏さに満ちた感じは薄く安心して観られるようなところはあったかもしれない。やはりすべてが明らかにはなるわけではないのだけど。
雪が降るシーンが突然あり、そこだけ急に予定調和的でない荒々しさがあってハッとした。
それと荒川良々の持つライフルと横移動の方向性。撃った相手がすーっと後ろへ吹っ飛ばされる（吹っ飛ばされるというよりほんとにすーっと後ろへ引っ張られる）動きなどもちょっと笑えた。あと前半に反復された窓を役者の背中に配置する構図。窓の向こうが見えててもだいたいどん詰まり感がある。菅田将暉はずっと小物感のある演技が珍しい感じ。彼だけ瞳の光をいつも捉えられてる。岡本天音は以前別の映画の予告で観てZ世代的な気持ち悪い顔貌（失礼）が忘れられなかったが本作のクズな役回りは好かった。格差社会における五十歩百歩同士。古川琴音の役は黒沢清のミソジニー全開でこれまた笑うしかなかった。
貸してもらう車がルノーのカングーでえ〜と思ったが、エンブレムと段ボールの菱形マークを同期させてたのかな。あと菅田将暉の家の硝子戸の持ち手も菱形。
