"今"が人を壊す瞬間
現代社会に蔓延る闇と黒沢清ワールドが融合した本作。転売ヤーとして生活を送る主人公に舞い降りる社会の暗い目と寓話的結末。サスペンスというよりも社会派ホラーに近い作風で、現実的に考えたらあり得ない設定も含めて黒沢清監督"らしい"一作でした。
本作の面白い点は、前半は誰かに狙われているかもしれない型サスペンスで観客を満足させるように、程よい緊張感を持続。ですが後半からVシネを思い出すかのようなサバイバル劇に変貌。個人的には前半の居心地の悪い雰囲気が好みだった為、そのまま突っ切って欲しかったのが本音。それでも俳優陣のあざとく、そっけない演技が最高だったので最後まで駆け抜けられました。
昔の黒沢清と今の黒沢清を一度に楽しめる狂作。たしかに思っていた展開とは程遠いストーリーでしたが、前半と後半の振れ幅の差にただただ笑うしかありません。監督の過去作だと『ドッペルゲンガー』に近い印象でした。転売ヤーと闇バイトの怖さを誇張して描くことで、分かりやすいリアルさを与える。抜け出せない地獄の入り口が分かった気がします。
2024.12.29 初鑑賞
