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ルックバックのryo0587のレビュー・感想・評価

ルックバック(2024年製作の映画)
4.0
原作は、公開当時バズっていたことは知っていたが未読。

まんまと泣かされた。60分足らずの中編とは思えぬ密度と満足度

藤本タツキって女性作家なのか?と疑いたくなる繊細さ

チェンソーマン2部で絶賛悪ふざけ中の作家に泣かされるとは…笑

『ファイアパンチ』『チェンソーマン』だけでなくこんな話も作れるなんて振れ幅スゴイ。

それをこんな瑞々しく映像化した製作スタッフも素晴らしい。音がつくとやべえな…

田舎の空気感とか陽が沈む情緒とか子供時代の純粋でひたむきな時間とか、極めて解像度高く映像に落とし込まれている。

冬にまた観たい。

自分より絵が巧い京本への対抗心からひたすらに努力し、それでも差が埋まらずに一度は諦めるけれど、一番のライバルが自分を認めてくれたことが嬉しくて漫画への原動力になり、一番の理解者として歩むけれど、いつか袂を分かって別々の道を歩むことになり…

日常に適応し生きることが精一杯の我々大人達に、忘れていた真っ直ぐにひたむきで純粋な気持ちを思い出させてくる。

後半の、実際の事件を彷彿とさせる展開は胸糞過ぎて直視できなかったが、
タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド』を藤本タツキなりにやりたかったなかなと思った。

タランティーノが理不尽に殺されたシャロン・テートをフィクションの力を借りて作中で救うように、
時間を超えた漫画の一コマが京本を救ったかもしれない未来を作り出し(空手をかじっている設定や藤野のマンガのコマがすべて伏線になっていてこの辺の完成度にも戦慄した。こうした未来があるかもしれないというのが『ワンハリ』同様一つの救いになっている)、
救われた未来の京本の漫画が今の藤野の背中を再び押す本作の結末もまた、フィクションだからこそできる奇跡、フィクションの力を描いた素晴らしい構成だと思う。

…と、こんなくどくどした素人のレビューを吹き飛ばすように最後にストレートに語られるのは、何故、漫画を描くのか?という問いに対する答え。
それは「誰かが自分の漫画を読んで喜んでくれたから」。

亡き友達との振り返りし日々を胸に藤野は今日も黙々も机に向かう。
その最後のカットに涙腺が崩壊しすべてのクリエーターに尊敬と感謝の念を抱かずにはいられない。
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