【描いた事で相棒の運命を変える事の表と裏を追う】
■あらすじ
学年新聞で４コマ漫画を連載している小学４年生の藤野。クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の４コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。
以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。
しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。
漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…。
■みどころ
チェンソーマンこと藤本タツキ氏の漫画を原作にした作品。
本作は学年新聞の漫画を連載する藤野、そのコマの一部を譲って描いてもらった京本の漫画を見て衝撃を覚える。
漫画を描き続ける事への意義、言霊ならぬ画霊によって運命を決定づけたと感じる葛藤、漫画を描く創造の神秘故に様々な”ifストーリー”を予測してしまう…など、本作はダイナミックな絵作りだけでなく漫画を描くクリエイティブさの魅力・想像してしまう恐怖を描くのが特徴的な映画だと思う。
藤野と京本の出会いが漫画であり、漫画によって彼女らの閉ざされた人生が大きく変わる。
このことから漫画は人生のモノリス・マイルストーンのような存在に昇華しているのだと。
それ故に様々な喜怒哀楽が漫画によって発現していくが、同時に漫画を使った文通を通じて藤野と京本それぞれにドラマがあると明示するのは素晴らしかったです。
まるで「取り返しのつかない事をしてしまった」と嘆く彼女に「私にも描いた世界がある」と指し示す姿、受け取った側の「ある行動」を含めて創作の素晴らしさ・怖さを踏まえて「運命に操作されずに自分の創造を描くことで切り開く」までの一連のストーリーは漫画家ならではの発想で惹かれました。
