gock221B

ルックバックのgock221Bのレビュー・感想・評価

ルックバック(2024年製作の映画)
4.0
素直に良かったので、この監督にアニメ『チェンソーマン』を最初から作り直して欲しいです

藤野と京本、2人が描いた4コマ漫画が互いを動かし人生の方向性を決定づける。やがて2人は一つになり、互いに素晴らしい世界を見せ躍進し続ける。
だが、そういった良い面だけではなく、他者へ与えた影響によって、大事な人間、二人一緒なら何でもできるはずだった相手に図らずも破局を迎えさせもする……というところも同時に描いたところが良いね(しかも「方向性の違いから喧嘩する」とかそういうありきたりなつまらない展開じゃなくね)
これは藤野と京本、2人の話なんだけど、個人的には作者藤本タツキが投影されていそうな「藤野」一人だけの話として観たところもある。京本は妖精のような非現実的な雰囲気もあるし何よりも一人の作家の奥底にある純粋なクリエイティビティの擬人化のように思えた
「藤野」という自分本体と、「京本」という自分の奥にある「漫画を描きたいという自分の夢」それを世界に拡散していった結果、社会から想定外の「ネガティブなもの」を寄せ付けてしまい、自分の中の純粋なクリエイティビティ(京本)が一旦、失われてしまった。だが描くことしかできない藤野は再び描き始め、描くことによって己を回復させていく。そうすることでしか生きていけない。描くのを辞めると死んだも同然なのでそうするしかない。それにより「自分自身(藤本)を力強く後押ししたい、自分を無心で信じて応援してくれる内的な自分(京本)」は息を吹き返し、また「漫画を描く」という地味で辛い作業をしている時だけ、藤野は再び京本に逢える……
と、そんなお話だと受け取った
この作品は漫画原作、映画ともに「何か真剣に創作した者じゃないと、その価値がわからない」とよく言われたりする(クリエイターによる一般人へのマウントじゃなく、うまく感動できなかった人が自分を慰めるためによく言っている印象)
自分は別に漫画家でもクリエイターでも何でもないけど「自分の中の大事なものを失うが、それをすることによって回復し、またそれをしている間だけ再びいつでも自分の中の大事なもの(京本)に逢える」といった本作の(僕個人がそうだと思った)内容は、割とクリエイター関係なく、あらゆる人の人生や各個人にとっての大事なものと同じだと思うんですよね。だから割と誰が観ても感動できると思いますわ

本作の良いところはいっぱいあるのだが中でも、藤野と京本の声優がアニメ専門の声優ではなくジブリ作品みたいに若い女優さんがやったのが一番凄く良い部分だと思った(特に京本)
これによって作為的な匂いが抜けて、世界から若干浮いてしまっている2人が上手く表現できていた

ブログに感想書きました
https://gock221b.hatenablog.com/entry/2024/11/19/173851
gock221B

gock221B