エイリアンを使った『ドント・ブリーズ』をやりたかったんだろうなぁと第一に思う映画でした。今までのシリーズの設定の数々をしっかりとなぞっているし、セオリーも外さず時系列的にも矛盾なく、そんな中でも違和感のない程度に監督の味を出せているので満足できる作品になっていると思います。
初代『エイリアン』にならうように色味を落とした画面構成が荒廃した未来世界と馴染んでいてオープニングから掴みはバッチリだったと思います。時々忘れそうになりますけどエイリアンシリーズってディストピアフューチャーの世界観なんですよね。その空気感を全編に渡りちゃんと出せているので映像面は文句なしだったとも思います。ロムルス宇宙センターも気温の低さが映像から伝わってきて好みでした。
そしてスペースホラーとしても悪くない出来でした。フェイスハガーの大群が押し寄せてくる恐怖やゼノモーフ型はお馴染みの姿で出てきた時はやっぱり興奮します。監督がフェデ・アルバレスなので彼を知ってる人は全員予想するであろう、静音を生かした恐怖演出もやはり効いていて鑑賞中普通にビビってしまいました。ジャンプスケアあります。
宇宙空間というロケーションを生かしたギミックも豊かでそのアイデアの数々には割と感心しました。特にエイリアンの血液が強酸であることによる影響の数々や、それと無重力を掛け合わせた演出は素晴らしい。
ただ完全に乗り切れなかった部分もある。まずいちばん不満だったのは人が少なすぎること。こっちはエイリアンが愚かな人間を惨殺し貪り食うところを見たいのであるので、今作の被害者が少ない展開には少々物足りなさを感じます。登場した時点で性格やビジュアルから死ぬ順番がなんとなくわかってしまうのでその後の展開も意外性が損なわれてしまっているような気がします。
あとエイリアンシリーズといえばお馴染みのアンドロイドキャラですが、この顛末も少し思うところがあります。今までのシリーズに出てきたエリート好青年のアンドロイドキャラではない造形は好みだったり、役者の好演もあって中盤までは興味深く見れたんですけどコイツもまぁオチは結構予想がつく感じだったし、場面場面によって打たれ強さが変わってくるのがご都合主義に感じました。そのあたりの一貫性は保って欲しかったな。この映画の大筋は予想通りのことが起き続けるだけだったので、もっと工夫が欲しかったとは思います。
画角がIMAX仕様だったので、IMAXで観るのがおすすめ。初代『エイリアン』リスペクトな描写しか出てこないだろうなと思いましたが、『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』の要素もいくつか拾っていて嬉しかったです。
船で寝てただけなのにかなり酷いことになってしまったラナかわいそう。