きついノリになったら嫌だなぁ〜と思いながら見に行って、実際冒頭の数分はきついノリだったのでやっぱりこれダメなやつだったかな?と思っていたら、そこから盛り返しがすごく結果思っても見ない良作になっていて驚きました。竹内秀樹監督の相変わらずの手腕に驚かされます。
原作にはなかった現実世界の人間パートを挟むことで細胞たちのはたらきがどう作用するのかがわかってそこはいい改変だったと思います。人間パートも阿部サダヲと芦田愛菜という確かに実力のある俳優が演じてくれるので説得力がありましたし、細胞パートも正直最初はキツかったんですけどそれも10分と見ていれば役者陣の熱演のおかげでいつの間にか鑑賞に耐えうるクオリティになっていました。
阿部サダヲ&芦田愛菜親子のパートがまたなんとも仲睦まじく、それによって後に引き起こされる悲劇の悲惨さがまた際立ってくるという。この手のファミリー映画にしてはけっこうハードな展開になってくるのも思い切っていて素晴らしい。現実も細胞もマジで?!ってくらいハードな展開になる。
また今の邦画界の中では竹内監督は大人数の見せ方がすごく上手い。果てしない数の細胞を擬人化している映画なので、その人口密度感が出せていないと意味がない映画なんですがそのラインはゆうに超えていると思います。それぞれが体内で生活している様も見ていて楽しいし、外敵との戦いもアクション自体は正直凡庸なんですが人の多さでなんとか映画で見られるレベルになっている。
ここまでで済んでいたらかなり好みにハマっていたんですけど、終盤の展開運びがあまり好きではないです。正直長すぎる。現実パートの一番泣かせなければならないくだりで、今まで特に伏線も何もなかったような方法でおとしにかかってくるので完全にこっちは泣く準備できてたのに、涙が引っ込んでしまいました。細胞パートもなんかダラダラしていたし、上映時間が後20分短かったらスッキリまとまっていたと思うので非常に惜しい。
それでも全てがまっさらになった荒野、純白の天使のような少女が降り立ち闊歩するカットとかかなり好みの場面もあったので結果としては大満足。これを見た子供は自分の体調に気を使うようになり、親は子に「お前も体調管理しっかりしろよ」と啓蒙しつつ今夜から飲む酒を控えるようになる。そんな誰もが楽しめる一本だったのではないでしょうか。
演技があざといガキが急成長してFUKASEになるのおもしろい。