シャチ状球体

エイリアン:ロムルスのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)
3.6
まず、内容についてはいつものフェデ・アルバレス監督作品と殆ど変わらない。舞台と登場人物とクリーチャーが違うだけで、演出も展開も他の2作と変わらないということを前提にして、その上で他2作よりもマシになっている部分が多い。

欠点だった人物描写については、各キャラクターの背景が少しではあるものの説明されるので実在感がなくはないという感じ。20/100が35/100になったくらい。

『ターミネーター2』ばりにしぶとい人間&クリーチャー(退役軍人)もそのままだけど、エイリアンは寄生と誕生を繰り返す習性&設定があるから、飽和感が多少抑えられてはいる。
でも、貨物船で脱出して終わりでいいじゃん、と2回くらい思いました。
貨物船で脱出したところでエンドロールでいいじゃん×6。

そんな感じで新鮮味は全くないかと思いきや、相変わらずそれ以後の展開に繋がらない導入だけは完璧なんですよ!(涙)
鉱山惑星でウェイランド・ユタニ社に低賃金かつ重労働で時間と尊厳を搾取されているブルーカラーの労働者たちが、脱出のために必要なコールドスリープの燃料を取りに廃棄船に向かう……って、プロレタリアムービーというジャンルが出来たのかと勘違いするくらいにわくわくする作りだから今回こそは……と期待しちゃうんだけど、やっぱりその設定はフレーバー程度でそこまで効果的には回収されない。

企業には労働者の人権より企業の成長を優先するという原理原則があり、企業の成長と労働者の搾取はセットだということをきちんと描いているのに、本編の大部分を占めるエイリアンから逃げるシーンではそこが停滞してしまうのであんまり印象に残らない。
『ドント・ブリーズ』は退役軍人の家に忍び込むまで、『エイリアン・ロムルス』は廃棄船に到着するまでがピークだね……。
この監督にスター・ウォーズの次期3部作の1作目だけ作らせたら非の打ち所のない映画が完成しそう。

妊娠とエイリアン、といえばAVP2を思い出す(永遠に思い出さなくていいです)けど、監督の力量が段違いなのでそこはある程度説得力のあるシークエンスになってたと思う。
ただ、リドリー・スコットのエイリアンシリーズでフェイスハガーに寄生されるのが全員男性ジェンダーのキャラであるということは考慮してほしかった。考慮とは考慮のことです。

資本主義はクソ。
このまま行くと、150年後ぐらいには刑務所が辺境の惑星に作られたり労働者が別の惑星に出稼ぎに行ったりして、惑星間の環境が共有されにくくなってインターネット以前の時代に逆戻りするかも……。
シャチ状球体

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