ヨーク

エイリアン:ロムルスのヨークのレビュー・感想・評価

エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)
3.9
ほとんど文句なしくらいに面白かった、と言ってもいいくらいには楽しめた『エイリアン:ロムルス』でしたが、文句なしに面白いとは言ってもそれは娯楽映画としてということでそれ以外の要素としてはう~む…となるところもある感じの映画でしたね。まぁエイリアンシリーズに何を期待しているのかでも結構評価が変わる作品だともうが、ちなみに俺はエイリアンシリーズってそこまで思い入れとかがあるわけではなくて、適当に宇宙船内の閉鎖空間とかでSFホラーしつつアクションもあればいいかなってくらいなので本作は正にうってつけという感じでしたね。そういう意味では個人的に相性のいい映画だったと思う。
だがエイリアンシリーズって様々な名監督たち、ぱっと思いつくナンバリング作だけでもリドリー・スコット、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、ジャン=ピエール・ジュネという錚々たる濃い面子が揃っていてそれぞれに尖った作家性を持っていると思うのだが、それでいくと本作のフェデ・アルバレスはなんというか薄いな…という感じだったのは否めない。ただ、そのある種の薄さが良い方向に作用していて、個人的な印象では90年前後くらいのハリウッドの娯楽作(いい意味で)って感じのただ楽しいだけの映画という感じだったので、ま、そこが好きかどうかで好悪が変わる作品ではないだろうかと思う。
否の部分としては、文句なしに面白くはあったのだがそれは上記したように娯楽映画としての面であり、それとトレードオフ的な感じで生命とは…人類の進化とは…みたいな作家性が入り込んでくるような思索的な部分は全然感じなかったんですよね。ファンの間ではあんまり評価が良くないらしいが、個人的には『プロメテウス』と『コヴェナント』は正直に言うとナンバリングシリーズのどれよりも好き(かもしれない)くらいなので、もっと地味ながらも濃い思考実験的なSF作品としてお出しされた方が好みではあったのだがそれはそれとしてあの路線続けてたらシリーズとして(興行的に)終わるだろうなという感もあったので、まぁ何だかんだ本作のただ楽しいだけの映画になったというのも悪くはないのだろうかと思う。まぁその辺は最初書いたようにエイリアンシリーズに大した思い入れもない俺の意見なので、ずっと追っかけ続けて事あるごとに過去作を見直しているというような人の目には本作がどのように映ったのかは分からないが…。
まぁでも面白かったしいいんじゃないかな、って思いましたけどね。今更ながらその面白い『エイリアン:ロムルス』のあらすじだが、なんか将来のない労働者の若者たち5~6人くらいが新天地を目指して旅立つのだがその途中で立ち寄った宇宙ステーションにはエイリアンがいてびっくり! 彼らは生き残ることができるのか!? というもの。
ね?『プロメテウス』とか『コヴェナント』にあったようなSF的なテーマも特になく、過去作の監督たちのように個性的な舞台や演出を用意している感じがまったくしないでしょ? そもそもそのあらすじというか舞台設定が1そのまんまじゃん! という感じなのだが、当然それは狙ってそのようになっているのであって、要はファンサービス的な過去作オマージュなわけですね。それは何も舞台設定が1に似てるってだけじゃなくて他にも様々な過去作を匂わせるような要素があるし、極めつけにはおそらく(重ね重ねエイリアンはあんま詳しくないのでおそらくとしておく)本作は1の直後くらいの時間軸となっているのである。要は、こういうのシリーズファンにはウケるよな~、という要素てんこ盛りなのである。確か本作のように初代の直後ではなく直前であったと記憶しているが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』も似たような仕掛けのある映画であった。
ファンならそういうのグッとくるよなっていうのは分かりますよ。実際面白かったしね。フェデ・アルバレス自身がエイリアンシリーズ大好きなんだろうなっていうのも伝わってくるから微笑ましくもあるのだが、でもなんつうか志の低い映画だなっていうのは思いますよ。別に娯楽作品だからダメってわけではなくて、なんか初代を越えてやろうみたいな意気込みは感じないというか、非常にレベルは高いものの所詮ファンが作ったウェルメイドな二次創作という感じにも見えてしまったんですよね。誰も見たことのないエイリアンシリーズではなく、お馴染みでみんな大好きなあれやりまーす、という域を出ていなかったのでその辺の野心の無さが引っかかったというのはありました。
まぁね、そこは多分俺がガンダムシリーズの外伝とか作ることになっても(ならないけど)初代の焼き直しとかしてしまいそうな気もするので気持ちは分からなくはないのだが、でももっと攻めたもの観たかったなというのもそれはそれであるのだ。最初は結構褒めから入ったのに結局ディスってないか? と思われそうだが、いやその辺はちょっと複雑な気持ちもあるのだよ。まぁ楽しい映画であるのは間違いなかったから余裕で満足ではありましたけどね。
あとはそうだなー、別に貶すわけではないが余りにもテレビゲーム的だと思うシーンがいくつかあって、あれは映画がゲームに寄せてるというよりゲームが映画的映像と操作性を両立出来るようになったから映画的ゲームが当たり前になってて、受け手側の中でその両メディアの垣根が崩れてきてるようなところがあるからそう思うんだろうな、っていうのは思いましたね。フェイスハガーゾーンを抜けるときとかはモロにステルスステージという感じだったし、無重力シーンもそのアイデアや映像そのものが非常にテレビゲームでありそうな感じであった。極めつけにラストの4本のレバーを引け! なんてのはテレビゲームならエクスクラメーション付きの警告記号と共に画面上に表示されそうなギミックで、まんまラスボス戦的な演出だなと思ってしまった。まぁでもそれが悪いというわけではなくてしっかり面白さに繋がっていたと思うので、結論としてはやはり感想文の冒頭で書いたように娯楽映画として割り切ればかなり面白い映画なんじゃないかなという感じでしたね。
うん、まぁそこに尽きますね。なんだろうな、真面目なストーリーとかSF的ギミックを使った生命や進化といった深遠なテーマとかは放り投げて『キング・オブ・ファイターズ』みたいなお祭りゲームみたいなノリで撮りましたっていうもんだと思えば相当楽しい映画でしたよ。怖くはないけど最後までハラハラドキドキはするからね。まぁそういうのもいいんじゃないでしょうか。
シリーズの顔とも言えるゼノモーフさんがちょっと弱すぎないすか? 設定上そういう銃なのは分かるけど実戦経験ゼロの労働者にフルボッコにされるのはどうなんすか? というところはあるし、そこは考えれば考えるほど悲しい気持ちになるのだが、まぁ多めに見ておこう。反撃シーン自体は面白いシーンだったしな…。
思索的な部分を放り投げた上でつまんなかったら目も当てられないけど娯楽映画としてはめっちゃ面白かったわけだから十分でしょう。というわけで面白かったです。
ヨーク

ヨーク