レインウォッチャー

エイリアン:ロムルスのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

エイリアン:ロムルス(2024年製作の映画)
3.5
ハローエブリワン、『エイリアン・ザ・ライド』へようこそ~!
みなさんにはこれから、と~っても重要なミッションに挑戦してもらいます!制限時間内にステージをクリアして、仲間と一緒に宇宙船から脱出してね!

た・だ・し~、船内にはこわ~いエイリアンがた~っくさん!ヤツらはどこから襲って来るかわかりません。見つからずに突破できるかな?万が一のために銃を渡しておきますが(ここでお姉さんと動作確認)、《酸》にだけは要・注意です!ではでは、ハブアナイストリ~ップ!





…はっ!…なんだ夢か。
いや、わたくしにはくっきりはっきり見えましたよ、この映画がテーマパークの一角で元気に稼働してる図が。

つまりそれくらい、今回は「アトラクション全振り」映画!だ。純粋な《エンタメ力》という尺度でいえば、数あるシリーズの中でもNo.1なのでは?

ある意味、シリーズを知らない人も含めた多くの人がイメージしてた、「観たかった『エイリアン』」をストレートに具体化してしまった作品だろうか。
メインで起こることは初代『エイリアン』と同じ、宇宙船という閉鎖&暗闇空間でのお化け屋敷展開と言って良いのだけれど、見せ方によってここまでポップに遊べるとは素直に拍手だ。

アトラクションと書いたけれど、別の言い方をするならゲームっぽくもある。それくらい、ルール説明とステージ感覚が明確なのだ。

まず大枠として●分以内に脱出しないとゲームオーバー、というシンプルなタイムトライアルという大目的が示される(しかも何回もリマインドしてくれる)中で、いくつか下位のステージ割りが存在する。その各ステージはちょっとずつジャンルが違い、個別のルールが用意され、ちゃんと説明される。たとえば「音を出してはいけない」とか「弾が尽きる前に倒しきるべし」(※1)とか。

シューティングあり、アスレチックありのステージを進むごとに段階的に情報や使えるアイテムが増えて行き、難易度も上がる。そして全ステージを何とかクリアした…かと思われた後には隠しボスとのエキシビションマッチがあったりして。ほぼ大画面で観る『メトロイド』の実況である。

こういう作りには好き嫌いもあるだろうし、実際お話運びには無理めなところもなくはない…いや、まあまああったかも(※2)。しかし総合的に好感の方が勝って最後の瞬間まで観れちゃうのは、《ホスピタリティ》が熱盛りだからだ。

いきなりの《無音》でツカみにくるオープニング、上に書いたような丁寧すぎるくらいのルール開示、過去作(全作何かしらカバーしてそう)の諸ネタを彷彿とさせる隠れミッキー的お土産の数々、序盤で振っておいた伏線をベタだろうがアホらしかろうがすべて愚直に回収しきる西谷夕もドン引きの守備、等々。
どれもが「老若男女楽しませよう」として作っているのが伝わってくるからこそ、じゃあこっちもノってやろう!って思えるのだ。

このあたりから振り返っても、『ドント・ブリーズ』というシチュエーション特化スリラーの秀作を撮ったフェデ・アルバレス監督という人選にはとても納得できる。同時に、「もし誰々が次の『エイリアン』を作ったら?」という道を再び開いたともいえるだろう。

そもそも過去の『エイリアン』は、様々な映画監督が自身のカラーで挑んできたシリーズ(2~4)。リドリー・スコットさんの本家は一本太くあるとして、IPをうまく活用(運用)すると共に、若手~中堅作家のジャンプ台的機能に使っていっても良いんじゃあないだろうか。

こういった試みは、MCU以降のMARVELが成功させていた。『エイリアン』を擁する20世紀スタジオも(幸か不幸か)MARVELと同じく今やディズニー傘下なので、ない話ではなさそうだ。
今回の舞台となった植民星の設定には、幾らでもストーリーが作れそうな拡張性(それこそSTAR WARS的な)を感じた。また、エイリアンというクリーチャーそれ自体はけっこう匿名性が高い性質を持っていると思うので、小回りと潰しが効くのは利点になるだろう。

そう、せっかくディズニーブランドなんだから、冒頭のアトラクション、ガチでディズニーランドに作れば良いんじゃあないだろうか。ちょうどいまスペースマウンテンが改修中なので、ついでに『エイリアン・ザ・ライド』にアレンジしちゃおう。もとから暗いし。

で、キャラグリーティングでゼノモーフとか出てきて、ドナルドが酸で溶かされて、ミッキーには中の人などいないけど中にエイリアンはいました!ピギャーブシャー!なんつって大笑い、子供は泣き、ランドは閉鎖され、舞浜はゴーストタウンになって夜な夜な奇怪な泣き声が海風に乗り…



…はっ!…なんだ夢か。

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今回の主人公チームはあんまりポンコツじゃないのも助かる。メンバーが科学者とか軍人などの所謂プロ(自称)ではなく、みんな一般人に近い若者たちなので自ずとハードルが下がると同時に親近感は高まり、イライラしづらいのもあるのだろうけれど。

あと日本語吹替とても良かったです。ファイルーズあいさんは死ぬのがお上手でした。

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序盤、冷凍ガス(?)でフェイスハガーを撃退する様子に「ゴキジェット」という単語が浮かんで消えました。

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※1:なにせ銃の残弾数まで視覚化される。

※2:やはり気になるのはとにかく「酸 is 最強」なこと。酸利権とかあるのだろうか。
しかし不思議なもので、『プロメテウス』の「これは男性用です」とか『コヴェナント』の「すべってころんでうちゅうせんがばくはつ」とかのクレイジーなお笑いが今となれば懐かしく、今作はどこか物足りなくも思えてくるのだった。