塔の上のカバンツェル

遠すぎた橋の塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

遠すぎた橋(1977年製作の映画)
4.3
高校生の時に観て以来、後年になって好きな映画になった。
ここまで登場人物たちの努力が報われない映画も珍しいくらいに、不手際に不手際が重なり最終的に失敗に終わる作戦を圧倒的な物量で描く戦争映画。

敗北を描く戦争映画に間違い無し!と思ってるんだけど、負けることを描く以上、何らかのモチベーションが作り手に無いと作品が完成しないわけで、必然的に力のこもった映画が出来上がるんだと。


本作の題材は説明不要のww2の連合国の一大空挺作戦、"マーケットガーデン作戦"。
本作戦は史実では戦略目標を奪取できずに、最終的に失敗する作戦なわけで。

そもそも本作戦にあたっては、ノルマンディー上陸作戦以降に自身の昇進を巡って駄々をこねた英軍司令官モントゴメリーへの配慮としてGOサインが出た作戦という側面があり、
そんなモントゴメリーこと、モンティその人は本作製作時点では存命だったためか、作り手が忖度したのかは謎だけども、作戦の失敗と責任転嫁を行う責任者としてモンティの副官ブラウニング中将を嫌な役として描いており…その辺も批判されてもいるという。
劇中の「90%成功」の件は史実ではモンティの言質だったそうな。
何処までも責任を取ろうとしないモンティに偏見混じりの嫌気が指しますなぁ。


本作の魅力的なポイントはやはり、物量でしょう。
多数のエキストラに、大量の空挺兵がパラシュートで降下してくるシーンは圧巻の一言。
イアンマッケランが率いる戦車隊の戦闘シーンやロバートレッドフォードの一瞬の尺ながら漢気溢れる渡河シーンなど、全部ホンモノ!を売りにできるこの時代の戦争映画の魅力が詰まっていると思います。

そんな華やかな戦闘シーンに加えて、本作の最大の魅力はなんと言っても、円滑に進まない報・連・相!
報告が届かない、連絡がつかない、相談しない…現場の調整が上手くいかない仕事の苦悩が詰まっている緊張感溢れる場面が続き、最終的な破滅へと繋がっていくのを予感させるという点で、「日本のいちばん長い日」にも通じる皆の頑張りが致命的に空回っている群像劇としてのサスペンスが確かにあるなぁと。

他にもポーランド軍団の姿あり。
同じくww2の空戦映画、「バトルオブブリテン」でもポーランド人部隊が結構な尺で出ていたりしますが、ww2のイギリス映画ならではの亡命ポーランド人軍団の勇姿は本作でも垣間見れます。
特に司令官ソサボフスキーが後にモンティのスケープゴートにされる史実を思うと不憫でならない。

陽気さはかけらもなく、現場の漢たちの努力の数々が事勿れ主義と責任転嫁の末に英国軍司令部に封殺されるションボリ映画は嫌いにはなれない。
いや、モントゴメリーはやはり嫌いかもしれない。