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化け猫あんずちゃんのmasayaのレビュー・感想・評価

化け猫あんずちゃん(2024年製作の映画)
4.2
水彩画のような田舎の風景に、モフモフ巨大猫のあんずちゃんがヌッと現れる絵でもう面白い。化け猫なのに基本怪奇らしいこと何もしなくてめちゃくちゃ面白い。みんな生きてる、それ以上求めてどうすんの。誉められもせず苦にもせず。ただ心地良いオフビートな時間が流れる。

あんずちゃんの住んでるお寺に預けられたカリンちゃんが終始クソガキなのも最高に良い。周囲の期待に応える術は知ってる、でも本当にそうしたい訳じゃないから顔に出るし、指摘されたらムカつくんだよね。大人の思い通りにはなりたくない、でも自分でどうにもならない無力を恨んで舌打ちばっかり。

そこは山下監督の作風なのか、子供を理想化しない分、いっぱしに醜さも嫌らしさも持った小さな人間としての子供がよく再現されていて、ちょっと鼻につくけどどこかで会ったことある子供像をカリンちゃんに見ることが出来る。井上君と林君にもね。

結局あんずちゃんが化け猫になったのも、妖怪やビンボウ神や地獄の住人達と繋がれた訳も、父親の借金や母親が亡くなった理由すら劇中で語られない。カリンちゃんが住んでいるのは不親切で意味不明すぎる冷酷な世界。
適当でいいんだよは、それでも生きていて欲しいの必死のメッセージが形を変えたもの。
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