オリジナル版にあった、むせかえるような工業の香りとチャーミングなキャラクターは消え、そこにはただ断絶と終わらない復讐が横たわっていた。
面白かった!!!
「復讐譚」が持つ空虚さ、しかし見つめることをやめられない強迫観念。
カメラ内に映らない人々の表情が恐ろしい。後ろから映る、ボケの強い登場人物の後頭部が幽霊のようにカメラ前面に映り込む。
そんなシーンに代表される、黒沢清の持つ「フォーカスへの感度」の高さがやばい。
終盤、高いところに立つサヨコをカメラが映す時、眩しさとフォーカスのボケによって姿を捉えきれない。あれが恐ろしい。翻ったコートの色でサヨコだと分かる。
ドタバタした誘拐劇を覗き見るような長回しはいつも通り美しく、殺意は純粋な行為に還元され、恨みが爆発するシーンはほとんどない。こういう静謐さが、今回のロケーションにとても合っていたと思う。
またオリジナル版も見よっと。今作、配信早くてありがたかったね。