オチは気に入らないが、そんなことはどうでもよく、「思い出」というものがもたらす作用を完璧に描き切る胆力があった。
序盤からテンポよく「街そのものの回想」が始まる。ショットを彩る全てが豊か。
街を見て、街が変わり、人が変わっていくことを思い出す。
思い出であると注釈さえつけば、それはどれほど輝いていてもよいものだ。現実のリアリティと思い出のリアリティは全く違うお作法で湧き出る。スクリーンに映る全てが川面の反射光みたいに美しく回想を促す。
こういう、空間と時代が主役であるような映画が本当に好き。
宗教啓蒙映画は、結果よりも旅路にこそ本質を認めてほしいので、こういう手合いのハッピーエンドはあんまり好みじゃないけどね。それを差し引いても心地の良い映画だった。