修羅の眼差し
黒沢清監督の『蛇の道』を監督本人がセルフリメイク。舞台を日本からフランスに変え、主人公も女性に。それ以外の変更点はほとんど見受けられない正真正銘の"リメイク"です。
ただ、あまりにもオリジナル版そのままなので新鮮味が皆無なのは否めない。本作の特色は、柴咲コウの流暢なフランス語と、美しいフランスの景観。特に前者は本当に褒め称えたい。役者としての根性が素晴らしすぎます。
道徳心の欠片もないストーリーはリメイクでも健在で、相変わらず怖すぎる。何気ない静かな空間でさえ恐怖心が芽生えてしまうのは、黒沢清監督ならではの魅力。しかしながら、日本人だからこその怖さがオリジナル版には嫌なほど存在していたので、その分マイルドな仕上がりになっていました。オリジナル版の香川照之が怖すぎたんだよな…
人間的な怖さは勝てないものの、撮り方の怖さは本作の方が上。オリジナル版以降、何本もホラー映画を生み出した黒沢清監督だからこそのカメラワークの卓越さ。見事です。
主人公の職業が変更されていたのは懸命な判断。塾講師から精神科医にしたことで、より不透明な人物像の形成に結びついているよう。吉村との会話シーンは何とも言えない気まずさと居心地の悪さが融合していて最高。
総括して、オリジナル版には勝らないものの、リメイクとして綺麗な完成形でした。絶対にやってはいけない事だからこそ、この作風は癖になってしまいます。鮮やかなすぎる復讐劇です。
終盤の1シーンは編集ミスなのか、あえてそうしたのかが疑問。
2024.11.26 初鑑賞