ヘロヘロ

蛇の道のヘロヘロのレビュー・感想・評価

蛇の道(2024年製作の映画)
3.3
怪作のオリジナルに対して本リメイク版では主人公の性を置き換え、脇役にフランス人俳優を使い、舞台もフランスに移したことで「フランス映画」っぽくなるのかなと少し興味があった。蓋を開けてみると、やっぱり黒沢的なるものが横溢する黒沢映画以外の何物でもなかった。

車移動のシーンでは定番のスクリーンプロセスを用いているし、廃墟ほか、テレビモニターは流石にブラウン管じゃなくて液晶が、さらにパソコン(インターネット)も出てくるがそれらがフランスにおいて意味を新たに纏う訳ではない。

そもそもフランス観光案内的なサービスカットが挿入されることもない。(まあ、そんなカットは望んではいないがw)

柴咲コウが話すフランス語を除けばフランスを舞台にする必要も特に思いつかない。

前作にない西島秀俊のキャラが柴咲コウの人物造形に機能しているとも思えない。

前作の全体を覆う不穏さや不気味さは綺麗に削ぎ落とされ、物語の輪郭が明快になった分、プロットが特段面白い訳でもない本作が普通の物語に近づいてしまった感が否めない。

とは言え、前作でも、そもそも日本的なものが映っていた訳でもない。とすれば、フランス的である必要もない映画なのである。そんな物語をフランス語で語り直したらどんなふうに見えるのか?そんな実験を僕はみせられたのだろうか。
その成否はさて置き、僕にはあまり面白い実験だとは思えなかった。

マチューアマルリックの死顔は、映る度に不謹慎な笑いを誘われた。この点だけは観る価値があった。