Yoshishun

荒野の用心棒 4K復元版のYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

荒野の用心棒 4K復元版(1964年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

“マカロニ・ウエスタンの原点”

劇場にて絶賛上映中のドル3部作。イーストウッド×レオーネ×モリコーネの巨匠トリオによる傑作西部劇の4K版だが、本作はまさに伝説の始まりを告げる記念碑的作品といえる。

イーストウッドが名も無き男を演じポンチョを華麗に着こなしながら葉巻を吸いまくる姿も本作からであるし、レオーネによる定番の顔アップと、モリコーネによるさすらいの口笛含めた劇伴が刺激的すぎる化学反応を起こし、3部作の1作目ながらも唯一無二なスタイルは確立されている。また、3部作で唯一2時間未満と見易く、流れ者が街を牛耳る悪党に対して時にヒーローとして、時に卑劣者として成敗していく王道ストーリーも潔い。早撃ちの名手で余裕こいてたら、中盤で暗躍してたのがバレて拷問される展開もお約束だ。

言わずと知れたお手製防弾チョッキの下りは『BTTF3』でもオマージュされ、逆に本作自体黒澤明監督の『用心棒』のパクリ、いや東宝に訴えられてしまった程にそのままオマージュしている。ただイーストウッドの渋みのある演技力により本作ならではの魅力に溢れていることには変わりない。ただ井戸水を呑んでいる、馬に跨っている、軒下に隠れているだけでも不思議と画になってしまうのは、この頃からカリスマ性と色気に溢れていたためだろう。

苦言というか、観る順番を間違えたせいもあるが、後続の2作と比較すると明らかにスケールの小ささや、ストーリーが『用心棒』そのままなので斬新さの無さは否めない。

勧善懲悪ものの多いアメリカ西部劇とは異なり、保身や金のためなら平気で人を盾に使うし、都合の良いように態度をコロコロ変える人間臭いアンチヒーローがマカロニ・ウエスタンの味のように思える。本作からマカロニ・ウエスタンは誕生し、以後500作もの作品が量産されてきた。3人の巨匠が生み出した映画史に残るアンチヒーローの姿を大スクリーンで拝める機会は早々無いので気になった方は是非。
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