ノラネコの呑んで観るシネマ

ぼくのお日さまのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ぼくのお日さま(2024年製作の映画)
4.7
小さくて、優しくて、甘酸っぱくて、少し苦い。
北海道の田舎町に戻ってきた元フィギュアスケート選手の池松壮亮と、彼の教え子のさくら、彼女に恋心を募らせるタクヤの一冬の物語。
タクヤの想いを知ったコーチは、初恋を応援するつもりで、二人にアイスダンスのペアを組むことを勧める。
しかし、さくらが恋しているのはコーチで、彼には恋人がいたことから、三人の小さな恋は交わることなくすれ違う。
全体のテーマ曲となっているドビュッシーの「月の光」の様に、葛藤は淡い光を放ちながら、お日さまの裏に隠れ、ある時に突然顕在化する。
登場人物の心の機微を繊細に捉えた映像は、デジタルだけど16ミリを思わせる、フィルムルックのスタンダード。
今、幅の狭いこのサイズを選択する場合は、主人公の閉塞感を象徴していることが多いが、この作品の場合、縦の広がりを感じさせる光の表現が印象的で、あまり狭さを感じさせない。
閉塞感というよりも、こぢんまりとした世界観の表現になっている。
子供たち二人には、ちゃんとした脚本を渡さないという是枝スタイルだった様だが、ナチュラルな演技を引き出したのは見事なもの。
監督・脚本・撮影・編集を全部こなした奥山大史、商業映画デビュー作にして、2024年の映画史にガッツリ爪痕を残した。
28歳かあー、すごい若手がどんどん出てくるな。
若葉竜也が、地味に美味しいポジションを持ってゆく。