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ぼくのお日さまのプライのレビュー・感想・評価

ぼくのお日さま(2024年製作の映画)
4.1
あまりにも映像が美しい。フィルム風でレトロな映像が、最先端のキレイなデジタル映像では出せない色や輪郭を引き出し、心が奪われるほど鮮明な映像を作り上げている。風光明媚な白銀の世界。アンティークな香りが漂ってきそうな部屋。光の輝きと透明感が入り混じったスケートリンク。屋内外問わず、万物がレトロな色調で彩られて見惚れる。そして、見惚れた分だけ主要人物である3人を巡るドラマに没入できるようになっており、本作の美しい映像には多大なる引力が働いている。本作のストーリーは語りが最小限であるが故に余白が多いため、その余白を噛み砕かせるための引力として美しい映像が大いに機能している。まさに妙技。

ただ、終盤を迎えると悪い意味で物語に色が付く。というのも、主要人物が持つ病気やセクシュアリティの部分が若干ながら劇的に扱われ、絶妙な余白を保っていた序盤および中盤と比べて噛み砕く楽しみが大きく後退する。また、障害とセクシュアリティによる劇的な展開の先に辿り着くラストについても、今後の類似作品と比べれば結びとして弱い。というか、一昔前の作品を見てるかのよう。ステレオタイプに近く、2020年代に見る意義が感じられない。本作の主要人物たちが到達したアンサーよりも優れたアンサーを提示する類似作品なら他にあるし、これからも登場すると思う。本作は障害とセクシュアリティに凄くスポットライトを当てたわけではないが、終盤から劇的になった以上、そんな印象が残る。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計16個
プライ

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