回想シーンでご飯3杯いける

イカとクジラの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

イカとクジラ(2005年製作の映画)
3.5
「マリッジ・ストーリー」が凄く良かったノア・バームバック監督による過去作品。こっちも夫婦の別離が題材で、夫は文学教授、妻は小説家。親権争いではないが、子供達が別々に暮らす両親と曜日毎に移動しながら過ごす「共同監護」の中で発生する様々な問題が描かれている。

芸術家肌の夫婦に離別と、そこから子供に与える影響を描くストーリーは「マリッジ・ストーリー」とほぼ同じ。監督自身が、ある程度自分の境遇を反映さえた作品作りをする人なのだろう。

加えて、子供を育てる責任と、親のキャリア形成という天秤が、いかにもアメリカの芸術家、リベラル層という感じで、それが結末の良し悪しとは別次元で、映画の題材としては豊かになっている。僕なんかは、こういう口喧嘩から夫婦の人となりを描き出す手法が大好きなのだが(冒頭のテニスシーンの比喩性が凄い!)、日本では一般的に自分のキャリア形成を持ち出す親は批判の対象になりがちなので、映画のストーリーとしては受け入れられ難いだろうと思う。

しかし、まあ、本作の夫婦が「マリッジ・ストーリー」の2人より格段に自分勝手なのは確か。親の身勝手を見ながら悩み、やがては自立していく2人の息子の成長物語という趣が強い作品になっている。