「ポルノ界のアカデミー賞」を5回逃したポルノ俳優マイキーが、長年別居中だった妻の実家に無一文で帰ってきた。口だけは達者だけど、まるで生活力が無く、その特殊な経歴故に、新しい仕事も見つからない。そんなクズ男を描いた、かなりクセの強い映画。
鑑賞後に知ったのだが、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」や「タンジェリン」を手掛けたショーン・ベイカーが監督なのか。なるほど、いわゆる社会の底辺で生きる人間の描き方が上手い。
僕はマイキーを好きになれない。でも、こういう生き方をする人がいる事は知っている。共感重視の日本映画では、なかなか登場しないタイプだけど、彼なりの生き方を描き、観客を楽しませたり、イライラさせたりするのも、映画の大事な役割だと思うのだ。
マイキーのみならず、周囲の人間も皆我流で暮らしていて、ろくなもんではないけれど、映画が描く世界観として、これはこれでありだと思わせる。ドーナツ屋で働く少女も、ぶっちゃけ何も考えていないのだが、この映画のヒロインとしては眩しい存在だ。
隣りに住む爺さんと犬に助演男優賞を送りたい。