順慶

大きな家の順慶のレビュー・感想・評価

大きな家(2024年製作の映画)
4.5
この監督、「MONDAYS」の監督だったんだ。本作と全然違うじゃないか。

映画館で映画を見る理由はいろいろあるが、映画館か被写体のフィルターになるということは、初めて感じた。プロデューサーの斎藤工の狙いに共感する。なるほど。
お金を出して見たい人だけが集まる場所だ。あの劇場にいた人たちと時間を共有した感覚もある。
だから、本作は配信もパッケージもない。であるなら、しっかり焼き付けなければならない。

東京のある児童養護施設のドキュメンタリー。
ここで共同生活している子どもたちと働いているスタッフたち。
この施設が、「大きな家」ということ。
18歳になると、この「家」から「社会」に出ないといけない。

7歳の子から19歳になって施設を出た子たちを順にスポットを当てて、インタビューしながら、じっくりを見せていく。

子どもたちは、この施設を家とは思っていない。ここは「施設」だと。
そして、同居しているみんなは、家族ではなく「他人」だと。
実家のように、家族のようにと、よく描きたがるが、実際はそんなに簡単な感情じゃないんだ。血のつながりだけが家族じゃない。しかし、ここで暮らしている子どもたちは、適当なフィクションでは描ききれない関係を本気で感じている。

「学校で会うとなんか気まずい」は、いろいろ内包していて、作られたセリフじゃない感情だった。

映像が異常にエモーショナルで涙を誘う。
夕暮れ、太陽、桜、花、花火、影、くつ、足もと、うしろ姿、そして音楽も。
順慶

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