いち麦

野生の島のロズのいち麦のレビュー・感想・評価

野生の島のロズ(2024年製作の映画)
4.0
人間から与えられた指示ならどんなものにも応えることができるアシスト・ロボットが無人島に漂着し周囲は動物たちだけ。当然何の指示も与えられない状態に陥ってしまうが,そこでロズ(ロッザム7134)は周囲の環境をゼロから学習し自ら為すべきことを習得していく“シークレット”モードに切り替わる?…人智を越える勢いを窺わすA.I.が現実に活躍するようになった現代だからこそ、この設定はすんなりと受け入れられた。

人間も野生の中で孤立し無力で無垢な状態に戻ったらきっとこのロズと同じように母性だけではなく優しく思いやりのある心が育っていくはずではないか。ロボット映画なのに、そんな人間性回帰のテーマを受け取ることができた。

児童文学が原作とのことで綺麗に纏められた物語に大きな捻りや意外性はなかったものの、ファミリー向けのアニメーションとしてはまぁ満足。ロズのデザインや動きなどは宮崎駿アニメの影響を強く受けていると見た。

ただ、温暖化により変貌した近未来の地球が舞台だからこそ、任務遂行後のロボット回収がなぜ重視されているのか、そのために戦闘機能を持つ別ロボットらが開発されていった過去の経緯など科学パートを掘り下げて描いてくれたらもっとSF寄りで自分好みな作品になったとは思う。
それでも自然を映す精緻な映像はとても美しい。3Dのようにパースペクティブ感の強い上下背景も見事。

ロズ役ルピタ・ニョンゴの澄んだ美しい声に改めて気付かされた。調子のいいキツネのチャッカリ役=ペドロ・パスカルもしっかり物語をリードする明朗な声当て。ほんのちょっとだけれどヒグマのソーン役でマーク・ハミルの低い声が聞けたのは嬉しい。

字幕翻訳は林完治氏。字幕監修に前沢明枝氏(原作「野生のロボット」翻訳者)
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