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野生の島のロズのシネラーのレビュー・感想・評価

野生の島のロズ(2024年製作の映画)
4.5
『シュレック』、『マダガスカル』、
『ヒックとドラゴン』を製作してきた
ドリームワークス・アニメーションの
創立30周年記念作品であり、
予告編の段階から物語や
美しい映像に惹かれて劇場鑑賞。
自分が親になった時に改めて観たいと思う
愛ある作品で素晴らしかった。

野生動物達の暮らす無人島へ流れ着いた
ロボットのロズがある事故から
雁の雛鳥を育てる事となり、
子育てや島の動物達と交流する中で
自身の自我に目覚めていく
内容となっており、
物語としては機械であるロボットが
感情を得ていく王道展開ではあるのだが、
その見せ方が映像のクオリティと
相まって見事だった。
機械らしく論理的に動こうとする
ロズが子育てをする事となり、
論理的思考を捨てなければ行えない
子育てをしていく中で親心を得ていく
描写が丁寧だった。
雛鳥にキラリと名付ける事から始まり、
食事、泳ぎ、飛ぶという渡り鳥に
必要な力を教えていく奮闘劇は
微笑ましかった。
その過程で狐のチャッカリや
オポッサムの母親ピンクシッポといった
動物達の助言を受けていくのだが、
ブラックジョークも交えた
コミカルなやりとりは終始面白かった。
そして、成長したキラリが
旅立つ場面の情景と音楽は素晴らしく、
親から旅立つ子どもと
心配ながらも見送る親というのが
異種の親子関係だからこそ一層
感動的に思う部分が強かった。
これだけの盛り上がり見せながらも
全編の中でまだまだ中盤という
映画の構成にも驚いた。

可愛らしい動物達が生活する中、
劇中では決してファンタジーではない
弱肉強食な世界観が序盤から見られており、
そういった点はディズニーアニメよりも
一歩進んでいると思う部分でもあった。
厳しい寒波で動物達が危機に陥り
ロズが救おうとするものの、
助けた先で動物達が互いを食べよう
として争う展開も現実的に感じられた。
しかし、そこで声を挙げる
チャッカリの演説やロズの最後の台詞は
今の世界情勢だからこそ響く
メッセージ性だった。
そして、ロズ自身が本来の場所へ戻る
選択を迫られた時、
それまで築き上げられた関係性から
更なる盛り上がりを描いていくのが
爽快感もあって良かった。

全体的に物語のテンポも軽快で良く、
3DCGで表現される海や草木といった
自然界の表現も美しく、
劇中でのキャラクターの動きと重なる
絵面は本当に一枚絵として好きだった。
ロズのビジュアル自体も
物語の進行と共に傷ついて
苔も生えていくのだが、
ロズの柔軟性ある動きも含めて
『天空の城ラピュタ』における
ロボット兵の様だったのが好みに
突き刺さる要素でもあった。

幼い子どもの命によって
ロボットが自我に目覚めていく
王道展開を描きつつ、
大きな自然の中で共に生きるという
様々な愛が詰まった作品であり、
本当に大人から子どもまで楽しめる
素晴らしい映画だった。
珍しく劇場でパンフレット以外にも
キーホルダーといった
グッズも購入してしまった。
続編製作も決定しているが、
綺麗に本作だけでも終えていただけに
どんな展開となっていくのかが
手腕の見せ所であり楽しみだ。
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