キッチー

赤い風車のキッチーのレビュー・感想・評価

赤い風車(1952年製作の映画)
3.8
2001年「ムーラン・ルージュ」1954年「フレンチカンカン」と観て今回は1952年の「赤い風車」を鑑賞。
今作はムーラン・ルージュと関わりが深い画家ロートレックの伝記的映画。

オープニングから彼の絵を使ったり、赤い風車の建物、パリ市内モンマルトルにあるキャバレー、ムーラン・ルージュで繰り広げられる饗宴...芸術的に描かれていました。

騒々しい店内でコニャックを啜りながら一人絵筆をとる画家。こんなところで絵を描くなんて意外過ぎでした。

伯爵家に生まれたアンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック。子供の時に足を骨折し、両足の成長が止まってしまった彼は障害と容姿に対するコンプレックスから、家を出て、夜毎娼館通いをする退廃的な生活を送っています。そんな彼が貧しい娼婦マリーと出会い恋に落ちる。しかし直情的なマリーの奔放な振る舞いに傷付くロートレックは次第に酒浸りの日々に埋没していき、若くして病に倒れるのだった...

誰からも愛される少年時代を送ったロートレックがコンプレックスから相手を信じることが出来なくなっていくところは、気の毒ではありましたが恵まれた境遇を考えるとあまり共感はしませんでした。彼の絵は好きですけどね。

ゴッホとも親交があり後に後期印象派に分類される実力者でもあったロートレック。映画ではちらっと名前だけが出てくるゴッホですが、ゴッホに南仏アルル行きを勧めたのもロートレックらしいですね。ゴッホと違ってロートレックが描く絵は踊り子や娼婦といった人々だったり、躍動感のある作品が多いのですが、一種の動きを即座に再現していくシーンが印象的でした。そして、有名なムーランルージュのポスター。リトグラフ(石版画)を使って制作していくシーンも興味深かったです。

主演のホセ・ファーラーはロートレックと父親の一人二役でしたが、小さくて髭面のロートレックそっくりでした。なりきってましたね。娼婦のマリー・シャルレ役のコレット・マルシャンは感情の起伏が激しい役。娼婦が貴族のロートレックを振り回す様子は面白い。あと、ムーランルージュのダンサーや歌手の生き生きとした様子。当時の雰囲気を伝えてくれて楽しかった。終盤の回想はちょっとうるっとしました。

短いけどしっかりと生きたロートレックを知ることが出来る良作だと思いました。
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