耶馬英彦

ティアーズ・オブ・ブラッドの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

3.5
 アクションやミステリーで過去が謎の人物というと、どうしてもCIAやMI6のエージェントや軍の秘密部隊の一員などを思い浮かべてしまう。本作品の主人公レオは、体格的に優れているわけでもないから、どういう設定なのか、楽しみにしていた。答えを出されてみると当然の話で、とてもリアルな設定だ。我ながらややこしく考えすぎていた。
 主人公があまりにも強すぎると、ファンタジーになってしまう。本作品のレオくらいがちょうどいい。時系列上で、レオに分かっていることと不明なこと、できることと出来ないことを考えながら、同時に第二の主人公とも言うべき女刑事の側にも立って、分かっていることと不明なことを切り分けながら鑑賞すると、おぼろげに筋書きが読めて、かなり楽しめた。
 判官贔屓なのか、国家権力である警察から圧力をかけられるレオに感情移入してしまうが、女刑事たちの事情も少しずつ明らかになると、必ずしも敵対関係ではないように思えてくる。真相が明らかになると、その理由が納得できた。
 よく出来たエンタテインメントだが、親子の問題、移民の問題、警察の捜査手法の問題などがさり気なく散りばめられている。ベルギーにはベルギーの問題があるのだ。どこの国でも、人生は厳しい。
耶馬英彦

耶馬英彦