しゆ

ノー・アザー・ランド 故郷は他にないのしゆのレビュー・感想・評価

4.5
ヨルダン川西岸の村、マサーフェル・ヤッタ。
パレスチナ人のバーセルとイスラエル人のユヴァルが、4年にわたりイスラエルによる入植を記録した命がけの映画。

現在進行形で起こっている人権侵害を映し出したドキュメンタリーとして、この映像以上に雄弁な言葉はなく、どんな感想を書いても足りないと感じてしまうほど。

国や民族や宗教じゃないと頭では思えど、「ユダヤ人が来ることをよく思わない人間もいる」という警告が仕方ないことに思えるほど、イスラエルによる仕打ちはあまりに非人道的。

マサーフェル・ヤッタでの撮影を終えたユヴァルが「今日は帰るよ」と告げる台詞が、作中何度も映される。
それと呼応するように繰り返し思い出されるのは、『ノー・アザー・ランド』というタイトルのとおり、バーセルたちの帰る場所は決して他にはないという事実だ。

同時に劇場で本作を見る我々は、故郷や住む場所をブルドーザーで壊されるという地獄のような現実をどのような立場で「鑑賞」するのか。

「遠い国の出来事」「宗教対立」で済ませられる話ではない。

幸か不幸か、グローバル化した経済システムの中だからこそできる抵抗もある。
デモ以外にもBDSなどのかたちで、日常でできることから問題意識と実践を持ち続けたいと思った。
しゆ

しゆ