元ラジオ頭

フォロウィング 25周年/HDレストア版の元ラジオ頭のレビュー・感想・評価

3.0
クリストファー・ノーランの根幹と、成熟に伴って切り捨てていった要素を満遍なく摂取できる、初期作品ならではの面白さが溢れてる
「デビュー作にはその作家のすべてが詰まっている」という趣旨のことはよく言われますが、僕としては作家の成熟とともに失われていくものも詰まっていると思う。ノーランの場合は何かというと、「退廃感・背徳感」もしくは「不気味さ」です
大作映画を撮るようになってからのノーラン作品は他の映画では味わえないような斬新さや新鮮味を感じる反面、道徳観においては非常に保守的だと思う。それが初期作品、具体的に言うと『プレステージ』辺りまではその裏返し(こっちの方が先だけど)なのか、露悪的ともいえるくらい意地が悪い
この後ろめたさはメジャーになった後の作品では薄くなってしまったものですね
しかし今回のリバイバルで面白く感じたのは、この感覚が『オッペンハイマー』で若干復活している点です
その後ろめたさを『オッペンハイマー』でのノーランにしては露骨な性描写で感じたことからすると、ノーランの根幹の一つとして、「セックスへの嫌悪感」はあるのかもしれない。メジャーになった後それが減っていったのもそれが原因かもとも思う

ちなみに一つの映画としてみると、やっぱり初期作品だからか未整理な感じは否めなくて、70分くらいしかない上映時間なのに若干間延びして感じてしまった。これはノーランがまだ若かったからこその欠点といえるでしょう
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