あれはなんだったんだろう、そんな朧げな記憶。それはきっと夢と同じ。誰かを失うことは、その「誰か」ではなくて周囲の人々を揺らし壊していく。喪失と向き合う事は破壊と再生を行うこと。
鈴のような女学校の教師生徒の声と、天国のように美しい画。それを覆っていくオーストリアの大地の響きと動植物たち。大陸の自然はセントバレンタインなんて知らない。
作中ではボッティチェリの絵画に例えられたミランダだけど、まさに19世紀末の耽美主義の絵から出てきたみたい。フレデリックレイトンの「フレイミング・ジューン」が飾られてあって、死とまどろみの境目にあるこの作品を象徴するようなカットだった。