くまねこさん

憐れみの3章のくまねこさんのレビュー・感想・評価

憐れみの3章(2024年製作の映画)
3.7
「憐れみの3章」TOHO日比谷、劇場公開最終週にギリギリで鑑賞。以前のヨルゴス・ランティモス監督が戻ってきたような訳が分からぬ165分。推しのエマさんが出演してるので結構楽しめた。

3つの物語の中で同じキャストがそれぞれ異なる役柄を演じるがゆえに混乱しているが、奇想天外で支離滅裂なのに何故かある種の整合感があり3つが繋がってる印象もある。

冒頭のユーリズミックスのヒット曲、
”Sweet Dreams (Are Made of This)”がズバリ象徴的でこの箇所のみは理解しやすい親切設計!全編に通底するテーマは「支配と依存、搾取する側と搾取される側、世界、社会のシステムから決して逃れられない人間の哀しみと可笑しみ」と言っても良いだろう。

選択肢を取り上げられた中、自分の人生を取り戻そうと格闘する男、海難事故から帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官、奇跡的な能力を持つ特別な人物を懸命に探す女……という3つのストーリー。
このお話は、監督さんの出身国であるギリシャ悲劇の構成で成り立ってる、つまり仮面をつけた俳優とコロス(合唱団)によって演じられている奇妙な構成でもある。

イェルスキン・フェンドリックスのあの歪んだピアノの劇伴も印象的ながら、あのズーンとした重い合唱も心に残る。(台詞、状況をカットアップしたギリシャ語の歌詞を歌ってるらしい)

R.M.Fおじさん(ヨルゴス・ステファナコス)って、支配と依存のシステムの外にいる、エマ・ストーンたち主要キャストとは違い、彼だけ立ち位置が異なる存在、影響されない存在だという説も納得できる。
R.M.Fおじさんは、すべての物語に登場する唯一のキャラクター。ある時は車に轢かれ、ある時はヘリコプターを操縦し、ある時は死から蘇る。ストーリーに大きく関与せず、世界を俯瞰して見つめてる神視点の存在なのかも…。

R.M.Fおじさん役の方はヨルゴス・ステファナコス氏であり、職業俳優ではなく、ギリシャ・アテネ在住の公証人らしい。監督さんの知り合いをあんな配役にするって面白いよね。

(備忘録メモ)
第1話 「R.M.Fの死」
「自分の人生を取り戻そうと格闘する、選択肢を奪われた男」

・億万長者の支配的なコントロール配下に置かれながら働く男の哀しみと可笑しみ。
・車両を使った2度轢き(ワンカット撮影!)がエグい。どうやって撮影したのだろうか?

第2話 「R.M.Fは飛ぶ」
「海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官」

・夫婦スワッピングビデオ(!)が可笑しい
・夫に指示されて親指を切断し、肝臓を取り出すエマさん。玄関から入ってくる新しいエマさん。キリスト教のラザロの復活にも見える
・エンディング楽曲はDIOの”Rainbow in the Dark”はうれしいがこれも意味不明。

第3話「R.M.Fはサンドイッチを食べる」
「卓越した宗教指導者になるべく運命付けられた特別な人物を懸命に探す女」

・ドリフトしながら疾走するエマ・ストーンに笑う。(モーテルに入ってくるスピードではないだろう)最終的には豪華客船ではなく小さなボートに衝突というのはなんとも皮肉。

・胸とヘソの距離を測るエマさん。あの身体測定ってアレなに?ハンター・シェイファーがヌードになる必要性は本当にある?(監督さんは女優を脱がせ過ぎだろう)

・ヘンテコ踊りのエマ・ストーンのあの芸風、これからもまだ続くのか?(エンドロールのタイミングというのも良い)