【第97回アカデミー賞　短編アニメ映画賞ノミネート】
アヌシー映画祭で受賞したベルギーの短編アニメーション。

イスタンブールに植毛手術に来た三兄弟、ホテルに閉じ込められるうちにそれぞれの抱える問題が明らかになっていく。不穏な空気感を醸し出す演出が見事。好きではないがクオリティが高い作品。

• #第97回アカデミー賞

今年のオスカー短編アニメ映画賞ノミネート作品🇧🇪　三兄弟が植毛治療のために訪れた旅先で、誤って一人分しか予約していなかった事で起こるハプニングを描いたストップモーションアニメ。

話の展開に特筆して驚くべきポイントは無いが、そもそもこのプロットでこれだけ不穏な空気感を充満させられる作劇力にビックリする。「美しい彼」や「美しき仕事」を(自分の中で勝手に)彷彿とさせるタイトルに惹かれて観たが、あまりそういう印象は無い……いやそれこそが狙いか。終盤の兄弟の一人の表情が何とも言えない、、結局彼らの人生は好転したのかな。「サブスタンス」に同じく、今年はルッキズムも注目ポイントなオスカーだ。

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植毛治療を受けるため、はるばるイスタンブールまでやってきた三人の中年男性（スティーヴン、バート、コーエン）の物語。手違いで一人分しか予約が取れていないことに気付いたスティーヴンは、親友への告白に躊躇いながらも心を痛める。この予期せぬ事態から生まれる人間関係の機微を、本作は繊細に描き出す。

さまざまな誤解や行き違いが重なっていった後、たとえ結果がよかったとしても信頼関係の修復は容易ではない。トイレの個室での勘違い、霧の中でのすれ違い、そして思いがけないアクシデントと告白のタイミング、後悔先に立たず—。旅先での男たちのぎこちない交流を見守りながら、どこか愛おしさを感じずにはいられない、心温まるトラジックコメディだ。

アカデミー短編アニメ映画賞にもノミネートされた本作は、緻密な技術が光るストップモーションアニメーション。作り込まれた人形のクオリティの高さは特筆に値する。それにしても、『フシギなフラつき』といい今作といい、ストップモーションクリエイターは男性器を作らなければ気が済まないのだろうか。「本物の人間じゃないからどれだけリアルな性器でも堂々と映していいだろう」という、表現の自由への挑発的なチャレンジ精神を感じる。

そして本作の真骨頂は、決して美男とは言えない、むしろ冴えない三人組の日常を描く視線の温かさにある。たどたどしいやり取りとうだつの上がらない姿を淡々と映し出しながら、「美しい男たち」というタイトルが実に効果的に響く。それは、誰もが持つ日常のありのままの姿こそが、かけがえのない美しさを秘めているという、静かな宣言だ。

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