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卍 リバースのmatchypotterのレビュー・感想・評価

卍 リバース(2024年製作の映画)
3.5
原作は谷崎潤一郎の『卍』に着想を得て、その原作から“男女逆転”など、アレンジが施されて映像化された“文芸エロス”作品。

ものすごく自分と距離が近いところで作られている作品。
ということでご縁があって初号試写にて。

原作は読んだことがなく、距離が近いと言いながらほとんど前情報ナシに挑んだら大変なことになった。

何となくビジュアル的に最近の時流に乗ってBL的なラブストーリーかと思った。
しかしそこは文豪、谷崎潤一郎。そんな優しく切ない話ではなかった。

この作品はそうした文豪が紡ぎ出した“文芸エロス”の上で織りなす物語。
冒頭からかなり絡み合う。肉体的にも精神的にも。

いわゆる“ラブストーリー”と言われて連想するような物語ではないとは言える。
だけども、ぢゃあ何か、と言われると“ラブストーリー”のようで、、、うまく断言できない、そんな感じ。

とある夫婦の夫が前からやりたかった絵の勉強をしたくて会社を辞めて美術学校へ。
そこで知り合った男と良い関係になってしまう。

ここまでが比較的早いタイミングでやってきて、その良からぬ関係が妻にバレて、、、とそこも既定路線かと思いながら、ここから先、どうなっていくのかと観ていたら、、、。

好きだ嫌いだ、離れよう離れたくない、男が好きか女が好きか、そうした淡く切ない話に収まらない。
まったく収まらない。

これ以上説明するとネタバレのような気がするし、完全に説明できない気もする。
なかなかの衝撃。

途中から三角関係?契約書?薬?と、人には言えない恋心の話からどんどんどんどん逸れていき、どんどんどんどん泥沼にハマっていき、最終的には自分たちでは対処し切れなくなっていく話に発展していく。

この一連の流れというか、踏み外し具合というか、歯止めも効かずに次から次に飲まれていく感じ。予想だにせぬ展開。

自分たちの欲望のままに生きようとした結果、自分たちの意図してない方向に転がっていき、気づいた時には止まる術を持たないことに気付くこの雰囲気。

これが“とある一室”で後日談的に本人から語られる形式で、話が混濁していたり、話している相手の倫理観も問うてくるあたりが、この話のどこかおかしい異常性を強調してくる。

まず間違いなく言えることは天気が悪い朝イチから観る映画ではない。

観終わった後は、本当に文芸書を一気に読んだ直後の達成感と、作品の雰囲気に飲まれて脳が答えが欲しくて処理を急いでいて妙にソワソワするあの感じになる映画。

主人公が要所要所で「え?」と言う通り、ノーマルではないことが多々あるのに、どこか淡々としているところに心がザワザワしてくる。

そして、そのザワザワが自分にとっての何のザワザワなのか、なぜザワザワするのかを考えると怖くなってくる映画。

※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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作品単発のレビューはここでやっているので、こちらは企画記事メインに挑戦したいと思います。
皆さん、時間がある時にでも見に来てください。
(まだ始めたばかりでお粗末が過ぎるブログですが)
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