のっち

アディクトを待ちながらののっちのネタバレレビュー・内容・結末

アディクトを待ちながら(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「失敗したことないんですか?」

2年前に薬物使用で逮捕された大物歌手。他のアディクトとコンサートを開こうとするが、主役の大物歌手が来ない…。
『ゴドーを待ちながら』を下敷きにしながらも、当事者、家族、メディア、SNS、ファンなどなど、さまざまな視点から見たアディクトの見え方とその変化が映し出されている。

社会の生きづらさって関係性の希薄さ≒孤立なんじゃないかと感じる今日この頃。この映画では、孤立するまでの経緯からその回復。それをとり巻く人々の心境の機微が綺麗事抜きで映し出されているのに柔らかい映画になっている。

おそらく多くの人が、タクシーに乗って転職を考えている会社員の視点だと思う。アディクトのことはマスメディアで責められるどうしようもない人だと思っている。そんなことよりも自分の生活で手一杯。ただ、少しのきっかけで知ることができれば自分の価値観を変えられる。
インフルエンサーだってはじめはバズりそうな話題に食らいついただけだが、そこで起こるリアルに感じるものはあったと思わされる。(ここで感情のセリフがないのがさらに良い)
娘が中学受験を控えた雑誌記者だって謝罪ではなく感謝をもらったことで何かが突き動かされたかもしれない。

また、美容師の視点が心の救い。一見チラシを渡されて困ってしまった人かと思えば、失敗した人への思い入れは人一倍ある人物。もちろん、先生の息子のように巻き込まれた側はたまったもんじゃないだろうし、綺麗事ばかりではないと思う。それでも、一本くらいはこのくらい優しい映画があっていいと思う。
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