知的障害を抱える人らと接する機会が多いので、彼らの独特な言語感覚で話す様子や、一つのことに異様に集中する姿を見て親近感が沸いた。で、ある程度その場の感じが想像できる上でまずおもったのは、相当前向きに作られた作品なのかなと。他人に暴力を振るったり、大声で叫んだり、人によってそういうことをするのは日常茶飯事で、おそらくそんな様子もカメラはとらえていたはずだが直接描かれることはなく、シゲちゃんが介護者を抓ったとか道で暴れたみたいなことは会話の中でのみ言及される。
「阿賀に生きる」でもそうだが、普通に見て悲惨というか悲痛になる場所に身を置いてそこから前向きに生きる人を優しく照らし出すのが佐藤真のスタイルだと感じる本作でもその意思は充分に示されている。感情の赴くまま自由に表現する彼らに触発されたのだろう本作の編集や音楽の使い方、タイトルのデザイン含めてすべてイキイキとしている。佐藤真もまた1アーティストとして表現している感じがして非常に良い。これがあったから「self and others 」というドキュメンタリーの枠を完全にぶち壊した新しい映画を創造できたのかなとおもったりもする。