ローマ教皇が急死し、首席枢機卿トマス(レイフ・ファインズ)の仕切りによって教皇選挙が執行される。穏健保守派や強硬保守、初のアフリカ系枢機卿が票を集めるが、それぞれにスキャンダルや弱みを持っていた。そんな中、任命されたばかりのアフガニスタン・カブール教区のベニテス(カルロス・ディエス)が注目を集め始める。
ローマ教皇を扱った作品といえば、「2人のローマ教皇」「天使と悪魔」なんかがあるけど、これはエドワード・ベルガー監督による全くテイストの違うスリラーの快作だ。
地味で静かな根回しと投票のはずが、耳が痛くなるほどに大きな効果音と音楽で、勢力争いの激しさと不穏さを感じさせるのはエドワード・ベルガーらしい。
そして、この地味なドラマが抜群に面白く感じたのは、駆け引き、証拠集め、どんでん返しが大好物の法廷劇にとても良く似てるからのような気がした。
もちろん、すでに4年に1回のエンタメと化している、某国の選挙への当てつけでもあるだろう。
最近は世界中で、テデスコのような人物が優勢のようだけど。笑
隔離された空間でのドラマを支えてるのが名だたる俳優たち。
すっかり悪役づいてるジョン・リスゴーに、誠実さの中に嫉妬心と弱さを見せたスタンリー・トゥッチ、今や監督として成功しているセルジオ・カステリット、語り部ながら喜怒哀楽すべてを表現したレイフ・ファインズ。
それぞれの役割を完璧にこなしていた。
以下、ネタバレあり。
爆破事件の後、ベニテスの “こんなくだらない場だと思わなかった” という言葉に枢機卿たちは息を吞む。トマスすら、票を数えることに盲進していたことに気づかされる。
文字どおり密室に風穴が開き、閉鎖的だった枢機卿たちが外の世界に目を向けるようになる。ここがクライマックスと思いきや、そこからのもうひと山が見事だ。
出番は少なくともインパクトのあったイザベラ・ロッセリーニの、“私たち修道女は見えない存在” が実はネタバレ誘導だった。
序盤のトマスの “確信こそが寛容の敵、疑念を持って迷いながら前に進むことが大事” という言葉が核心を突いていて印象的で、心にメモってたんだけど、ベニテスがインターセックスだったことから、トマス自身がその言葉と対峙することになる。
無名のカルロス・ディエスをあえて配置することで、目立たず見えなくても、世界中に同じ立場の人々がいるんだというメッセージが伝わってきたし、トマスの決断がよりドラマティックに映った。
脱走(迷走)する亀を池に戻すという行為によって、本来の信心の意味を取り戻したことを見せる演出も巧みだ。
宗教そのものではなく、世界中の聖職者や宗教家への強烈なパンチが爽快!