菩薩

シャイニングの菩薩のレビュー・感想・評価

シャイニング(1980年製作の映画)
4.5
たとえ目の前に完璧な世界が広がっていようとも、そこに存在する人間が完璧で無い以上、世界はいつまでたっても完璧にはならない。密室=世界、そこを統べる力を持つ者は、自らが標榜する完璧さを追求する為にルールを作り、時には力を以ってそれに従わない者を拒絶ないし排除をしていく。究極に完璧な世界、それはつまるところ孤独な世界なのではないか、その世界に自分以外が存在していなければ、誰の干渉を受ける事も無く、誰に邪魔をされる事も無い。完璧な人間とはきっと常に孤独な人間なのだ、だが人間は結局その孤独を受け止める事が出来ない、だから完璧な人間にはなれないし、世界は完璧にはならない。迷宮に足を踏み入れた者、その迷宮を俯瞰で眺める者、誰かに追われる者、その足跡を追いかける者、その足跡が消えてしまったら、何処にも行けなくなる者。誰かの密室=世界の壁を破壊する斧、己の密室=世界に入り込んだ異分子を排除する斧、自分が望む自分の在るべき姿、誰かに望まれる自分の在るべき姿とのズレ、苦悩。そう言えば名画座等に行くと良くシャイニングを発揮している人達に遭遇する、彼等はきっと自分をフィクショナルな世界に閉じ込めてしまったのだろう、それは幸せな事なのかもしれないが、その孤独はきっと寂しい物である。
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