うっちー

ANORA アノーラのうっちーのレビュー・感想・評価

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)
3.6
アカデミー賞も変わってきたものだなぁという印象。今年は地味だとディスられ気味だったけれど、結果主要部門で強かった本作については正直、そこまで?という気がする。

基本的にはとても面白いし、主人公アノーラがストリッパーだということで、ゼックスワーカーに寄り添った、という見方があるけれど、そういう見方になっているかどうかは疑問だと思う。というか、寄り添った、って何?という疑問すらある。今作の監督の以前の『フロリダ・プロジェクト』はそう思ったのだけど。

主人公アノーラは、まだまだ未熟な女性だと思うし、性格的にもあまり良くない。ストリップクラブでライバルとやり合うシーンは『吉原炎上』などの五社英雄監督作の女性同士の格闘シーンみたいに思えた(そこまでの情念もない)。また、今まで社会や家族にろくな扱いをされてこなかったのか、攻撃こそ最大の防御と思っている節がありそう。イヴァンの父が仕向けた男たちが入ってきた時の反応は、アノーラの方が過剰に暴力的だったから。結婚したから夫の家は自分のもの、と考えるのも、そもそもあの夫が何か自分のものを持っているのかを確かめることもせずに思い込みだけで獣のような過剰反応。絵的には面白いけど、あの叫び声が耳障りでちょっとイライラしてしまった。

本気で信じていたわけでないにしろ、最後の最後までイヴァンに賭けようとするアノーラは、正直ちょっと痛いし、それを監督なりの今のリアルないきいきとした女性像として呈示しているのであれば、そこには一票入れたくないという気持ち。個人的にはアノーラの生活感覚とかをもっと見たかったと思います。あと、もっと違う賢さを見せてほしかった。

イヴァンを演じた彼は確かにロシアのシャラメに相応しい繊細さが滲んで、前半のバカ息子っぷりと両親到着以降の膠着ぶりが見事。

そしてなにより押入りロシア系男性たちの愉快さが印象深い。特に若い2人。終始静かなイゴールはもちろん、クマみたいなアルメニア系の男性のふたりがどうにもかわいかった。これ、ロシア人のイメージアップになるのでは?という。

イヴァンの両親、とくに母親は嫌みたっぷりすぎて、それはそれで立派でした。

全体的に短期間、短時間の経過の話なのでもっとコンパクトにできたはずだけど、そうすると完璧にミニシアター向け佳作になってしまうのかなぁとも。

因みにイヴァンとアノーラのセックスシーンは多いけれどなんだか全くエロくなく、これはお金が絡んでいるからの意図的演出かなぁと、今になって考えました。
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