このレビューはネタバレを含みます
“あなたに合った車ね。”
アカデミー作品賞。正直観ている最中はこれが?って感じではあったんだけど、後からジワジワとあぁ、いい映画だったな、いい演技だったなと思えてくる不思議な作品。ショーン・ベイカー作品が今年一番の映画に選ばれた事が最大の御伽話。
中盤までが色々とめちゃくちゃ五月蝿い。物は飛ぶわ殴るわ叫ぶわ脱ぐわヤルわセリフは被せてくるわ物理的にクラブとかストリップの音楽デカいわでとにかく五月蝿い。だからこそラストシーンのワイパーの音とアノーラのが初めて見せた涙が驚くほど静かで、辛え。指輪を取り返して来てくれたことで、イゴールに“対価”が発生して、自分が唯一売れる体で返そうとした時に、初めて一瞬の夢が儚く壊れた事に気づいたんだろうな。イゴールのあなたに合った車ってのは、アノーラが自分の人生の立ち位置みたいなものに気づいたことだったんだろうな。そしてただただ、悔しいけど恋に落ちてしまっていたんだろうな…。
マイキー・マディソン。体の張り方は元より自然体なのに映画的な彼女の存在には今後も期待せざるを得ない。イヴァンのクソゴミ御曹司の役もウザすぎてナイス。これが作品賞ってめっちゃいいわ。